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投稿日時: 2007-7-31 16:49
投稿者:ゲスト

発作の前兆としての症状。

ミトコンドリア病の軽症をもっていますが。
最近、37度〜から38・5度の熱をだしたりします。
私は、37度代を超えると体がだるくなります。
何か原因があるのでしょうか?
近くの病院に行きたいのですが・・・
アルギニン(アルギU)を服用しているため。
発熱の場合は、アイスノンで冷やして寝ています。
のどの痛みもたまにでたりします。
熱中症じゃないと思います。
お腹壊したりは、しません。
ミトコンドリア病は、進行するのでしょうか?

投稿日時: 2007-8-13 11:53
投稿者:ゲスト

Re:発作の前兆としての症状。

国立精神・神経センター武蔵病院の埜中征哉です。

私たち小児科医がみているのは小さなお子さんで、発作が起こるときの目の症状などを詳しく聞いたことがありません。成人のメラスを診ておられる飯塚先生にお答えいただくのがベストだと思います。お答えいただけるように連絡をとってみます。

飯塚先生が書かれた論文(Neurology 2002; 59: 816-824)では、メラスの成人患者さん14名中7人に発作時に目の症状があったと記載されています。どのような目の症状か分かりませんが、多分視野狭窄やめまいなどが含まれていると思います。詳しいことはしばらくお待ち下さい。

投稿日時: 2007-8-13 12:28
投稿者:ゲスト

Re:発作の前兆としての症状。

埜中先生、お返事ありがとうございました。
患児は8歳(男児)です。先日体調不良のため、経過観察入院中に、上記のような症状を呈しました。
急に、「物が2重に見える」と言い始め、指をかざして確認したところ、1本が2本に見えたり、眼球が左右に激しく小刻みに動く様な症状でした。発作の兆候と捉え、アルギニンの静注点滴をして頂きました。その後嘔吐や半身痙攣と言う重篤な症状は現れませんでした。以上のような経過です。
今までに脳卒中様発作と言う症状も、昨年の11月の初発発作後、これまでで5回経験し、発作の兆候の出方などが違って来ているように思われます。
今後の大きな発作の予防の為にも、初期の段階で察知できるように、色々な症例を知りたく思い、ごく最近の症状を質問としてさせて頂いた次第です。
もし、こう言った症状が出始めたら、要注意と言うような症例がありましたら、教えて頂きいと思います。
宜しくお願い致します。

投稿日時: 2007-8-15 8:43
投稿者:ゲスト

Re:発作の前兆としての症状。

Re: 発作の前兆としての症状。
北里大学神経内科の飯塚高浩です.

私は,主に成人のMELAS患者さんの臨床・治療に当たっています.

 小児発症の方とは多少異なるかもしれませんが,種々の脳の症状がみられます.MELASの患者さんには,頭痛,けいれん,嘔吐,記憶障害,片麻痺,視野障害,言語障害(失語)などがしばしばみられると本には記載されています.しかし,これらの症状が無関係に生じるのではなく,相互に関連しながら出現します.脳のどの部位が障害されるかによって症状は決まってきます.

 脳卒中様発作の初発症状としては,大人の患者さんでは,頭痛が最も多く,次いで,視覚障害,意識障害,けいれんです.頭痛も,脈打つようなズキンズキンと痛いと訴える方が多く,動くと更に痛くなる,吐き気を伴う,時には,キラキラしたプリズムの様なものが見えるとおっしゃる方もいます.このような症状は,いわゆる片頭痛患者さんにみられる片頭痛発作とほぼ同様であり片頭痛発作あるいは片頭痛様頭痛,悪性片頭痛と呼ばれている症状です.
 しかし,通常の片頭痛発作とは明らかに異なるのは,その持続時間です.片頭痛は通常一晩寝ると治る方が多く,長くても数日で消失します.しかし,MELASの患者さんでは,その症状が難治性で,なかなか消えず,日増しにひどくなり,そのうち,嘔吐を繰り返し,反応がおかしくなり,けいれん発作を生じたり,一側の視野障害を生じたり,失語が出たりして,脳卒中様発作と診断されることが多いです.つまり,MEALSの患者さんで,頭痛が長引いた場合,頭痛発作自体が,脳卒中様発作の最も重要な初発症状,あるいは
前兆ではないかと考えています.
 MELAS患者さんの頭痛発作の発症機序は未だ不明ですが,日本人の8.4%でみられるという片頭痛発作の発症機序と共通した基盤があるのではないかと臨床症候から考えています.単なる,脳の血管が詰まったり,拡張したり,脳梗塞を起こすから,頭が痛いのではありません.脳の表面や硬膜といわれている部分に分布する太い血管に,三叉神経という脳の感覚神経が分布しており,その三叉神経の末端が過度に持続的に刺激された状態(三叉神経血管系の活性化)が関与しているのではないかと推測しています.(これは証明されてはいません).
 また,脳卒中様発作で重要なのは,発症時にはけいれんはなくても,数週間は脳の細胞が興奮しやすく,けいれん発作を生じやすい状態が持続していることを認識することも重要と思われます.従って,初期にみられる眼の揺れ,特に,本人の意志とは無関係に,勝手に,発作的に,一方向に眼球の早い動き(眼振)がみられる場合は,前兆ではなく,部分的な脳のてんかん発作を生じている可能性があります.その後,反応がなくなり,大きなけいれん発作に移行することもあります.
 また,元気がないような,ぼんやりして,様子がおかしい場合も,前兆ではなく,脳卒中様発作自体が既に始まっている兆候である可能性もあり,てんかんには必ずしも,手足のガクンガクンするいわゆるけいれんがあるとは限りません.けいれんを伴わない転換発作重積もMELASの脳卒中様発作で多い症状であると考えています.注意を要します.
 いつもとは異なるおかしな症状が持続した場合は,病院を受診されることをお勧めします.
 
 最後に,ご家族の方の細かな観察が早期発見早期治療に極めて重要と思います.

投稿日時: 2007-8-15 9:05
投稿者:ゲスト

Re:発作の前兆としての症状。

飯塚先生、詳しいお返事を頂き有難うございました。
私自身、昨年の11月の初発発作より、発作の起きる様子や、起きそうな時の息子の体調の異変に、少しずつですが察知が付きはじめたように思います。
とにかく、いつもと様子が違う思ったら、直ぐに病院を受診する事が大事だと言う事が、先生のご説明でさらに詳しく判りました。
必ずしも、嘔吐やけれん等が無くとも、発作と捉える事が大事なのですね。
少しの変化に気を付けて、重篤な事態を招かないように注意していきたいと思います。
とても、参考になりました。有難うございました。