日本ミトコンドリア学会 本文へジャンプ
  
ドクター相談室
ドクター相談室 > 過去のドクター相談室 > 筋生検について

投稿日時:2007-8-8 14:50
投稿者:ゲスト

筋生検について

はじめまして。ミトコンドリア異常症のリー脳症の疑いと診断された2歳の息子についてのご相談です。
医師からは、難病で現在は治療法が確立されていなく改善回復の見込みなく大変厳しい状況だと説明されました。
今はビタミンなど数種類を飲んでいます。血液による遺伝子検査では日本人に多いとされる9種類の変異にはあてはまらなかったということで、筋生検をすすめられました。
ただし、筋生検をしてもどの変異かわかるのは50%、わかったとしても、劇的治療に結びつくとは言えないとのこと。
まだ小さいので、全身麻酔をして行うということで、麻酔によるリスクもゼロではないと説明を受けました。
親として色々と思う部分も多々あり、筋生検をすべきか考えております。検査によって急激に体力低下するのも怖いですし・・・
治療に結びつく検査であれば迷いもないのですが、厳しい現状のようなので、迷わずにいられません。
ご意見、お聞かせねがいます。
それから、変異が見つかったとした場合、それぞれ、この変異にはこの薬が効く、といったことがわかるのでしょうか???

投稿日時: 2007-8-13 10:24
投稿者:ゲスト

Re:筋生検について

Re: 筋生検について
国立精神・神経センター武蔵病院の埜中征哉です。

リー脳症の原因はいろいろです。筋生検や遺伝子検査で病気の確定診断がつくのは30%位です。70%はいろいろ検査をしても診断がつきません。診断としてはピルビン酸脱水素酵素複合体欠損、ミトコンドリアDNA変異(ATPaseコード領域内)、チトクロームc酸化酵素欠損、ミトコンドリア複合体I欠損などです。
 診断がついても、病気が治るような治療に結びつくものはありません。ビタミンB1依存性ピルビン酸脱水素酵素複合体欠損はビタミンB1の大量投与が有効です。ご質問いただいた方のお子様はすでにビタミン治療をうけておられるので、この病気ではなさそうです。
 私たちのところでは、筋生検の検体は凍結保存してあります。現在診断がつかない人でも、将来学問が進めば、保存した検体をまた取り出して、検索し診断がつけられる可能性があるからです。現在は治療法がなくても、将来画期的な治療法が出ないとは限りません。その時にはきちんとした診断名が必要です。ですから、将来のことを考えれば筋生検をうけ、診断がつくものならば診断をつけてもらった方がよいということになります。
 また、代謝性筋疾患はどのような病気が隠れているかわかりません。たとえば小児型ポンペ病というのがあります。このポンペ病には酵素補充療法がとても有効で、今年の6月から保険適応になりました。臨床症状は肢帯型筋ジストロフィーと同じです。筋ジストロフィーは治らないからと、筋生検を受けられなかった人の中にはポンペ病が隠されている可能性があります。幸い血液での生化学検査が出来ますので、肢帯型筋ジストロフィーで筋生検を受けなかった方は生化学診断を受けるように広報活動をしています。でも、情報が得られず治療を受けられない方がいるのではないかと、心配しています。
 ごたごた書いてすみません。わたし個人としては筋生検は受けられた方がよいと思います。筋生検は簡単な術です。慣れた人がすれば30分以内に終わります。麻酔も昔と違って、安全な麻酔薬があります。