久留米大学医学部小児科の古賀靖敏です。
８歳の息子様が脳卒中様発作でご入院になり、さぞ大変だった事と思います。
頭部MRIでの異常は見つからなかったとの事で、少し安心ですね。
MELASで脳卒中様発作を疑う場合、頭痛・嘔吐に加えて、けいれん、視野異常、四肢の麻痺などが起こります。典型的には、MRIで異常部位が見つかる場合が多く、拡散画像という描出でよく解かります。
MELASでけいれんが起こった場合、それが、脳卒中様発作の部分症なのか、部分的な脳の異常発火が全般化して全身性けいれん発作が起こったのか（二次性全般化したてんかんであり、この場合、当然、MRIで異常は見られません）を鑑別する必要があります。
今回のご質問では、Ｌ−アルギニン治療が早急に入ったために、出るはずのMRIの異常が防げたのか、単なるてんかんの重積であり、脳卒中様発作ではなかったのか、不明です。発作の時の嘔吐、視野の異常、四肢の運動障害の有無を確認する事が重要です。もし、てんかんのコントロールが悪いのであれば、抗けいれん剤の調整が必要です。
日本のコホート研究でも発作が無くとも病状の進行はあると考えられます。Ｌ−アルギニンが脳卒中様発作の予防、急性期の治療に効果があるのか、また、このようなサイレントな症状の進行を防ぐ事が出来るのかどうかを評価するには、今後のＬ−アルギニンによる長期試験が必要です。
脳卒中様発作を頻回に繰り返していると、徐々に脳の障害による傷が蓄積し、それが新たなてんかん発作の焦点となり、脳卒中様発作の引き金になるばかりでなく、てんかん発作も難治性となりやすい事を多くの患者様で経験しております。
一度けいれん重積を起こすと、脳内に乳酸がたくさんたまり、体が元の状態に回復するまで、長い時間が必要です。これは、ミトコンドリア異常の体質をお持ちの場合、特に顕著です。脳の形態的なダメージがなくても、機能的にはかなり疲れているのです。ゆっくり体を休め、回復を待って、徐々に元の生活に戻れればと思います。