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投稿日時: 2007-6-21 21:44
投稿者:ゲスト

ピアソン病について

生後8ヶ月の子供が、ピアソン病との診断をされました。今は、貧血がひどいとの事で、薬を飲んでいますが、ビタミンを飲んでいるほかは、いたって普通です。
ピアソン病は、貧血から、もっとひどいものになっていくかもとのことですが、進んで行った場合、生命に関わるのでしょうか?どれくらい生きられるのか、これからどうなって行くのか、不安でしょうがないのです。

投稿日時:2007-6-23 23:27
投稿者:gyuichi

Re:ピアソン病について

国立精神・神経センターの後藤雄一です。

ピアソン病は、時に生命が危険になるほどの貧血以外に、白血球減少で感染症にかかりやすくなったり、血小板減少が起こり出血がひどくなったりします。しかし、通常、重症の時期を過ぎると、血液の症状は自然と改善してきます。大事なことは、その重症度は人により異なることです。

ピアソン病の症状が改善した後に、カーンズ=セイヤ症候群という病気に移行することがあると報告されています。この病気は、目の動きが制限される症状を特徴にしていますが、それ以外に心臓の伝導障害(不整脈の一種)や目の奥にある網膜の変性で夜にものが見えにくくなるという症状がでることがあります。さらに、内分泌、腎臓、糖尿病などのいろいろな臓器の症状がでることがあると報告されています。しかし、その症状の出方、重篤さは、人により様々です。

それぞれの症状には、対応できる治療法がある場合があります。伝導障害ならペースメーカー移植、糖尿病ならインシュリンなど、これらのすべてを前もって説明することはできませんし、日々の医療の進歩で対処法が増えていっていることは事実です。ですから、出るか出ないかわからない症状を心配しすぎないようにすることが大切だと思います。信頼できる医師に定期的に診てもらうこと、何かいつもと違うと感じたらすぐ医師に相談することが肝要と思います。。

投稿日時:2007-6-24 20:49
投稿者:ゲスト

Re: ピアソン病について

ありがとうございます。良くなるかもしれないんですね。
少し、安心しました。
ミトコンドリア病の乳幼児の発症は、大人になることは100%ないと、なにかで見たのですが、それも個人差があるとは思うのですが、どうなのでしょうか?
そんなに早く、亡くなってしまうのでしょうか?

投稿日時:2007-6-25 20:49
投稿者:gyuichi

Re:ピアソン病について

国立精神・神経センターの後藤です。

ミトコンドリア病の症状や発症時期、その重症度はひとによりまちまちです。
2006-6-17に「ミトコンドリア病の予後について」というご質問に私が答えた文章がありますので、以下に引用します。
(ここから)
一口にミトコンドリア病といっても、病気の原因もまちまちであり、症状の現れる臓器(心臓や脳など)もまちまちであり、またその症状の現れ方に影響する要因(年齢、栄養、感染などのストレスなど)の関与もあきらかになっておらず、現在のところ診断がついた時点でその後の進行度を予想することはとても困難です。ただし、MELASという脳卒中様症状を特徴とする病型の場合に、一時期頻繁に発作をおこしていたものがある時期から頻度が減ることや、視力障害を特徴とするレーバー病(レーバー遺伝性視神経萎縮症)では、一度起きた視力障害が自然に軽快するという経過をとる場合のあることが知られています。ピアソン病というmtDNAの欠失をもつ病気の場合、乳児期の貧血はある時期から回復しますが、この場合は別の症状が後に現れてくることがあります。また、チトクロームc酸化酵素欠損症の中で、乳児期に重篤な症状を呈する患者さまの中で、1歳ころから自然に回復して治癒する病型が知られています(良性乳児型チトクロームc酸化酵素欠損症といいます)。
ミトコンドリア病は、ミトコンドリアDNA(mtDNA)変異による場合と核DNA変異による場合がありますが、MELASではそのほとんどがmtDNA変異によると考えられ、Leigh脳症や慢性進行性外眼筋麻痺症候群ではその80%が核DNA上の何らかの遺伝子の変異によると考えられています。お尋ねのmtDNAの変異率という問題は、mtDNAの変異で起きる病気で、さらに変異率が100%でない場合(ヘテロプラスミーといいます)のことであります。その代表はMELASになりますが、以前「変異率の変動について」でお答えしたとおり、血液や筋肉での変異率は他の組織や臓器の現状を現したものではないこと、厳密には個々の細胞が異なった変異率をもっておりそのような細胞の集団が組織として臓器としてどのような機能障害になって現れるのかの予想が難しいなどから、進行度や他の症状の出現の可能性を予測することは困難です。
 ミトコンドリア病にはまだまだ分かっていないことがたくさんあります。本学会の会員を始め、世界中の多くの研究者の仲間が日夜研究しています。毎年そのような海外の研究者との交流を行いながら、新たな治療法の開発に励んでいます。
(ここまで)。