投稿日時:2007-6-25 20:49
投稿者:gyuichi
Re:ピアソン病について
国立精神・神経センターの後藤です。
ミトコンドリア病の症状や発症時期、その重症度はひとによりまちまちです。
2006-6-17に「ミトコンドリア病の予後について」というご質問に私が答えた文章がありますので、以下に引用します。
(ここから)
一口にミトコンドリア病といっても、病気の原因もまちまちであり、症状の現れる臓器(心臓や脳など)もまちまちであり、またその症状の現れ方に影響する要因(年齢、栄養、感染などのストレスなど)の関与もあきらかになっておらず、現在のところ診断がついた時点でその後の進行度を予想することはとても困難です。ただし、MELASという脳卒中様症状を特徴とする病型の場合に、一時期頻繁に発作をおこしていたものがある時期から頻度が減ることや、視力障害を特徴とするレーバー病(レーバー遺伝性視神経萎縮症)では、一度起きた視力障害が自然に軽快するという経過をとる場合のあることが知られています。ピアソン病というmtDNAの欠失をもつ病気の場合、乳児期の貧血はある時期から回復しますが、この場合は別の症状が後に現れてくることがあります。また、チトクロームc酸化酵素欠損症の中で、乳児期に重篤な症状を呈する患者さまの中で、1歳ころから自然に回復して治癒する病型が知られています(良性乳児型チトクロームc酸化酵素欠損症といいます)。
ミトコンドリア病は、ミトコンドリアDNA(mtDNA)変異による場合と核DNA変異による場合がありますが、MELASではそのほとんどがmtDNA変異によると考えられ、Leigh脳症や慢性進行性外眼筋麻痺症候群ではその80%が核DNA上の何らかの遺伝子の変異によると考えられています。お尋ねのmtDNAの変異率という問題は、mtDNAの変異で起きる病気で、さらに変異率が100%でない場合(ヘテロプラスミーといいます)のことであります。その代表はMELASになりますが、以前「変異率の変動について」でお答えしたとおり、血液や筋肉での変異率は他の組織や臓器の現状を現したものではないこと、厳密には個々の細胞が異なった変異率をもっておりそのような細胞の集団が組織として臓器としてどのような機能障害になって現れるのかの予想が難しいなどから、進行度や他の症状の出現の可能性を予測することは困難です。
ミトコンドリア病にはまだまだ分かっていないことがたくさんあります。本学会の会員を始め、世界中の多くの研究者の仲間が日夜研究しています。毎年そのような海外の研究者との交流を行いながら、新たな治療法の開発に励んでいます。
(ここまで)。