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投稿日時: 2007-4-15 17:41
投稿者:ゲスト

リー脳症と外斜視

いつもお世話になっております。
娘5歳がリー脳症です。
眼振、弱視、視神経障害、歩行不安定等の症状有りです。
薬はアリナミンF、イノキノン、ビタミンE、内服中です。

今年3月末ぐらいから左目の焦点が合わない事が気になり、4月の眼科検診で尋ねて診てもらったところ、左目に軽い外斜視があると言われました。その時、眼科の先生は、病気からの視神経障害で視力が悪く、特に左目が悪く(両眼0.4、右目0.3、左目0.15)右で見ている癖があるから、左が外に向いてくる、視神経障害が更にひどくなればより外に向いてくる。今の状態のままであればそのままで仕方ない。ひどくなってきた場合、見た目だけの解決処置であれば斜視手術は出来る。と言われました。

リー脳症は眼球運動異常を伴いやすいとの事ですが、斜視等も伴いやすいのでしょうか?その場合なにか良い改善法は無いのでしょうか?調べた中で、斜視は放っておくと、より視力に悪影響とも有り、斜視手術だけでも行った方が良いのか、リー脳症が関係しているので、どうしたら良いものか?斜視症状が出てきたのはどういう事なのか?病気が進行しているのか?疲れさせすぎなのか?等、どうしたら良いものか?不安で心配な日々です。
ここ最近、この間の眼科検診時より更に左目外斜視がひどくなっていると見ていて感じます。時間帯的には朝より夜ひどい様に思います。疲労時、特にひどい様に思います。
なにか良きアドバイスをお願い致します。
投稿日時:2007-4-23 14:48
投稿者:gyuichi

Re: リー脳症と外斜視

国立精神・神経センターの後藤雄一です。

リー脳症に眼球運動障害を伴いやすいというのは、目の動きを司る脳神経の核(神経細胞が集まっているところ)が脳幹部にあり、その部分が障害をうける可能性があるからです。ご質問を読むと今かかっている眼科の先生から詳しくお話しをお聞きのようですが、リー脳症における斜視とか、手術のことなどが一般論として述べることができるような医学的知識になっているかどうか、眼科専門の先生がこの相談室を担当していないので申し訳ありませんがお答えはむずかしいです。今かかっている眼科にもう一度いって斜視の程度が進んだかどうかを含めた診察をうけ、また疑問に思っていることを聞いていただくのがよいと思います。適切なお答えができないこともあることをご了解ください。

医学的には、一般的な方法がいつもベストの結果を生むとは限らず、患者様の現在の状況を把握して、患者様と医療側ができるかぎり同意しながら取り得る医学的手段を選んでゆく過程が重要です。ましてや、一般的な治療法になっているかが不明な治療法や医師の技術に大きく依存する治療法を選択する場合は、なおさらその過程が大事です。

ミトコンドリア病は、神経や筋の症状以外に、心臓、糖尿病、腎臓、難聴などの種々の臓器症状が出現することがあり、いろいろな科の専門医に診断や治療について協力をいただかなくてはなりません。また、栄養、リハビリテーションなどの治療に関わる専門医やパラメディカルの方々とも連携してゆかなくてはなりません。ですから、いろいろな科の先生にこの学会に参加していただき、病気を理解し、適切な治療法を見つけ出してゆくように学会は活動しています。また、他の専門医の学会とも連携していくことも重要と思っています。

投稿日時:2007-4-23 19:38
投稿者:knakano

Re: リー脳症と外斜視

東京女子医大小児科の中野和俊です。

Leigh脳症のお子様に斜視を合併することは時々経験いたします。斜視の原因のひとつは眼科主治医の先生がおっしゃるように視力の左右差が大きくなるときき目だけで見るようになり、斜視が出てきます。もうひとつは脳幹、特に中脳に病変が出来ると眼球の動きが悪くなって斜視がでる可能性があります。視神経障害による視力低下と脳幹障害はどちらもLeigh脳症でおきる可能性があります。眼科主治医の先生に脳幹の障害が斜視の原因になっている可能性がないかお聞きするのもひとつと思います。脳幹の病変を見るためには、脳幹部に焦点をあててMRIを検討することが有効です。そのほか脳幹部の機能を評価する方法としては聴性脳幹反応、無呼吸モニターなどがあります。
対処方法ですが、視力の左右差による斜視の場合、眼科の先生が良くやっておられるのはパッチ療法で良いほうの目を一定時間覆って、視力の悪いほうで見るのを訓練する方法です。ミトコンドリア障害に起因する視神経障害、脳幹障害に対する根本治療はまだ確立していないので今飲まれているお薬を含めて、可能性のある薬剤を試みてゆくことになると思います。

投稿日時:2007-4-26 15:21
投稿者:ゲスト

Re: リー脳症と外斜視

後藤先生、中野先生ご返答ありがとうございました。

中野先生に質問があります。

娘は中野先生が指摘されたように、MRI所見で中脳被蓋〜背側部を中心にT2 HIGH SIGNAL(病変)有りです。眼には眼振、屈曲性弱視、視神経障害(視神経蒼白)、左目に軽い外斜視、眼球運動制限等の症状が有りそれについては特に左が悪い様に思います。その他の症状は、歩行不安定、手指振戦、筋緊張低下軽度有り等です。

先日眼科主治医に強くアイパッチを希望しましたが、眼科の主治医には視神経障害や眼筋麻痺等の症状が有る方にはあまり効果がみられない、一年も続く事ですし、ただのストレスになるだけでは・・とあまり賛成ではありませんでした。それでも親の希望を汲み取って下さり、やってみる価値もあるかもとの事でパッチ療法を帰宅後から早速開始したのですが・・思わぬ症状を発見し、動揺、落ち込んでおり、どうしていこうかと悩んでます。

娘がパッチ(右目を隠して)をしながら塗り絵をしている時に気付いたのですが、塗るピントが必ず右にずれるのです。パッチをしながらだと何をしても必ずピントから右にずれるのです。
その症状に動揺して、次の日眼科主治医に問い合わせたところ、
眼筋麻痺、眼球運動制限がある人はそういう症状があるとの事でした(枠内に字が書けなかったり等があると・・)。

中野先生、ミトコンドリア病に起因するこのようなの症状の場合でもパッチ療法等やってらっしゃる患者様、ご経験、改善例等ございますでしょうか?娘にとってパッチ療法が良い事なのか止めた方が良いのかとても悩んでいます。是非ご経験談やアドバイスをお願い致します。

それから娘は現在アリナミンF、イノキノン、ビタミンEを内服中ですが、ミトコンドリア障害に起因する視神経障害、脳幹障害に対する根本治療はまだ確立していないとの事ですが、そのような中でも少しでもそういう障害に可能性、効果がみられた薬剤、それについての症状緩和のエピソード等があれば是非教えて下さい。

長々といつもすみません。
お返事お待ちしております、どうぞ宜しくお願い致します。

投稿日時:2007-5-7 14:52
投稿者:ゲスト

Re: リー脳症と外斜視

中野先生 様

4/26日に投稿しました内容についてのご返答を頂きたく再度投稿させて頂きました。
お忙しいところ申し訳ございませんが、どうぞ宜しくお願い致します。
お待ちしております。
投稿日時:2007-5-17 11:28
投稿者:ゲスト

Re: リー脳症と外斜視

東京女子医大小児科 中野和俊です。

ご返事が遅くなり大変申し訳ありませんでした。

パッチ療法で右目を隠したところピントが右にずれると言う事ですね。両目で見たときにはピントはずれないですか。ずれないとすると効き目は右になっていると言う事です。眼科の主治医の先生がおっしゃるように眼球運動障害がある場合、矯正はしにくいと思います。しかし、効き目が右の状態が続くと左目の視力は今後下がっていくことが予想され、それがさらに斜視を助長する可能性はあります。今の段階ではパッチ療法をやめなくても良いのではないかと思います。今後、左目のずれがよくなるか経過をみる必要があると思います。もし、今よりずれが強くなるなど不都合な症状が出る場合は中止したほうが良いと思います。
ミトコンドリア病の患者さんにはパッチ療法を行っている例はありませんが弱視・斜視のある患者さんで眼科にお願いしてパッチ療法を行っている例はあります。これらの例では特に問題なく行えているようです。

私もLeigh脳症の患者さんには同じような治療を行っています。残念ながら何がいちばん効くかは今の段階でお話しするのは難しいと思います。症例によって異なるのも事実ですしそれらのことを断片的にお話しするのは適当でないように思います。ピルビン酸Naなども治療候補に挙がっていますが、もう少し治療に確信が持てるようになればお話できるようになると思います。