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投稿日時: 2007-4-12 11:49
投稿者:ゲスト

CPEOに伴う筋力低下・脱力について

以前ご相談させて頂きました26歳の女性です。
最近CPEOのせいか、四肢に脱力が少しずつ出始めています。仕事に支障が出ている為、
現在の仕事を辞めることになりました。本当は辞めたくないのですが、体の事を考えるとどうしても…。
そこで伺いたいのですが、筋力低下は、日頃のトレーニングによって補う事が出来るのでしょうか。

急ぎお伺いしたく、書き込みをさせて頂きました。
早急にご回答頂ければと思います。

投稿日時:2007-4-13 19:47
投稿者:ゲスト

Re: CPEOに伴う筋力低下・脱力について

東京都老人総合研究所の田中雅嗣です。基礎研究者からの回答で
あることをご了解下さい。

結論を先に述べますと、CPEOにおける筋力低下が筋力トレーニングによって予防できるかどうかは不明です。筋力を高めるのが目的なのか、持久力を高めるのが目的なのか、それによって方法が異なります。いずれにせよ、もし筋力トレーニングあるいは持久力トレーニングを実施されるなら、主治医の判断に従って運動療
法師の指導下に行うことが必要でしょう。きちんと指導を受けないと関節や筋を痛める危険もあります。また、定期的に血液でCK(クレアチン・キナーゼ)などの値を検査して、筋肉が壊れすぎていないかを確認する必要があります。

以下、詳しく書きます。

問1は仕事をどのように続けるかということとです。自分は働き続けたいが、会社から仕事が十分できないので辞めて欲しいと言われているように聞こえます(疾患が原因の場合、解雇は難しいので自主退職を迫られる)。どのようなお仕事かわかりませんが、疲れた時には、60分保健室で横になる。回復したら仕事に戻
る。それができるように会社にCPEOのことを理解してもらう。必要なら配置転換をしてもらう。主治医からの診断書が必要かもしれませんね。

ご存じと思いますが、ミトコンドリア患者・家族の会のHP( http://www.mitochon.org/ )から障害年金の受給実績と( http://www.shougai.com/seikou/sei_jyunkan.html#jyunkan_01 )社会労務士事務所へのリンク( http://www.kimoto-sr.com/ )があります。ハンディキャップを抱えた方も社会の中で可能な限り働く環境を作ることが必要であると論議されています(http://jhsf.info/index.php?itemid=2)。
ミトコンドリア機能障害を内部障害とみなして、障害認定と身障者手帳の交付を受けるなどの方法もあります。
Webの記事を調べると「特集/内部障害のリハビリテーション・肝臓機能障害者のかかえるハンディキャップhttp://www.dinf.ne.jp/doc/japanese/prdl/jsrd/rehab/r081/r081_015.htm )あるいは「難病患者の就労の実態と課題 http://plaza.umin.ac.jp/~haruna/ibd/ibd_miyazaki.htm)などが見つかりました。
しかし、これらは一般的な問題点の指摘に止まっています。
ミトコンドリア患者・家族の会のMCM掲示板( http://www.mitochon.org/cgi-bin/aska/bbsaska2.cgi)などで相談されてはどうでしょうか。

問2はトレーニングの効果です。「四肢の脱力」は疲れやすい、あるいは持久力低下と理解して宜しいでしょうか?「筋力低下」と「脱力」は少し意味が違うように思われます。
定義はさておき、ミトコンドリア病の患者さんでは、持続的な強い運動をしすぎると、ミトコンドリアからのATP供給が間に合わなくなり、筋肉が破壊されて、筋から大量のミオグロビンなどが血中に放出され(横紋筋融解)、腎臓で血液をろ過する糸球体がつまって急性腎不全に陥る場合もあります。
このため多くの臨床家は過度な運動をしない方が良いと答えるでしょう。また、ミトコンドリア障害があると運動によって活性酸素種による損傷が増大しやすいと懸念されています。一般に負荷をかけて筋肉を鍛える筋力トレーニングは一本一本の筋細胞を肥大させることが目的です。筋肉は使わないと萎縮してしまいま
す。高齢者でも筋力トレーニング(抵抗運動)をすると、筋力が回復し転倒や寝たきりを予防できることが報告されています。これがCPEOに拡大解釈できるかどうか不明です。

ミトコンドリア障害を有する方が運動すべきかどうかは研究者の間で賛否両論となっています(http://www.ncbi.nlm.nih.gov/entrez/query.fcgi?itool=abstractplus&db=pubmed&cmd=Retrieve&dopt=
abstractplus&list_uids=16331135)。
カナダの研究者はミトコンドリア病に対して抵抗運動や持久運動は効果があったと述べています
(http://www.ncbi.nlm.nih.gov/entrez/query.fcgi?cmd=Retrieve&db=PubMed&list_uids=1
2394637&dopt=Abstract)。
しかし、イギリスの研究者が多くの研究をまとめた最近の総説によると、運動療法に効果があるというには科学的根拠が不十分であるというのが結論でした(http://www.ncbi.nlm.nih.gov/entrez/query.fcgi?itool=abstractplus&db=pubmed&cmd=Retrieve&dopt=
abstractplus&list_uids=16437486)。

一方、2006年の雑誌Brainにデンマークの研究者が、ミトコンドリア筋症の患者においても有酸素的運動(aerobic exercise)は安全であり、運動能力を改善させることができたと報告しています
(http://www.ncbi.nlm.nih.gov/entrez/query.fcgi?itool=abstractplus&db=pubmed&cmd=Retrieve&dopt=
abstractplus&list_uids=16815877)。
ミトコンドリアDNA欠失を有する患者5人を含む15人のミトコンドリア筋症(脳筋症は含まれていない)の患者が対象でした。自転車エルゴメーターを使って、最大酸素摂取量の70%の負荷で30分間、12週間で50回の運動を実施したところ、最大酸素摂取量とミトコンドリアのクエン酸合成酵素の活性が上昇した。
運動をやめると8週間で最大酸素摂取量とクエン酸合成酵素活性は運動前と同じレベルに戻った。
変異ミトコンドリアDNAの割合や筋の組織学的所見は変化しなかったので、安全だと結論づけています。
もっと長期的なデータはありません。

なお、基礎研究としては次のような報告があります。
筋線維を形成している筋細胞には変異型ミトコンドリアDNAが多いが、筋線維の周囲に散在している予備の細胞(筋衛星細胞(satellite cell)には変異型ミトコンドリアDNAが少ないと]いうことが知られています。
筋肉に局所麻酔剤を注射して筋肉を壊死させると、筋衛星細胞から筋肉が再生します。
再生した筋肉を取り出して調べてみるとミトコンドリアの酵素活性が回復していたというものです。

しかし、実際に筋肉が壊れるほど強い運動をすることは、最初に述べた横紋筋融解の危険もありますので、慎重にならざるを得ません。
投稿日時:投稿日時:2007-4-16 11:39
投稿者:ゲスト

Re: CPEOに伴う筋力低下・脱力について

詳しいお話をありがとうございます。
やはり、仕事の内容から考えても私には辞めるしか術のない事も分かりました。

筋力トレーニングに関しては日々の生活もありますので、主治医に相談してみようと思います。

ありがとうございました。また何か不安になったら相談させて頂きたいと思います。