久留米大学医学部小児科の古賀靖敏です。
MELAS(A3243G変異)の息子様での体調維持に関するご質問ですね。
患者様の体調管理に関し、一般的な指標は無いのです。従って、私の病院受診での検査項目を記載します。
重症度の指標として
1)乳酸・ピルビン酸の各々の値およびその両者のモル比(細胞質の酸化還元電位の指標であり、正常では10です。乳酸・ピルビン酸の値そのものが高ければ高いほど重症であり、かつ、モル比が高いほど重症です)頻回に検査する必要はありませんが、何か病状が進行するか気になる症状があった場合検査されるとよいと思います。
2)ケトン体比(ベータヒドロオキシ酪酸とアセト酢酸のモル比で表し、ミトコンドリアマトリックスの酸化還元電位の指標であり、正常では3です。この比が高いほど重症です。)頻回に検査する必要はありませんが、何か病状が進行するか気になる症状があった場合検査されるとよいと思います。
3)血液ガスと電解質からアニオンギャップ(体の酸性の程度をみる指標であり、重症ほどアニオンギャップ値が高くなります。正常では16までであり、酸がたまっていれば、抗アシドーシス剤の服薬が必要です)
4)アミノ酸分析(L−アルギニンが少なくなると脳卒中様発作が起こりやすくなりますので、月に一回は検査しています)
5)カルニチンの値(脂肪を燃やすのに必要な微量栄養素で大切です。食事が細い方、肉類の摂取が少ない方、抗痙攣剤を多剤服薬されている方は、検査すべきです。半年に一回は検査しています)
6)頭部CT、頭部MRIは、脳のかたちの異常を検査するものです。必要があれば、検査すべきです。症状の変化が無くても、半年に一回は必要です。
7)脳SPECTは、脳内の血流の状態を検査する方法です。症状の変化が無くても、年に一回は必要です。
8)心電図、心ECHO検査は、合併症である心臓の異常を早急に見つけるための検査です。WPW症候群、肥大型心筋症の早期発見に有用であり、症状の変化が無くても、年に一回は必要です。
9)脳波検査
10)その他には糖尿病の検査のために一般採血時にヘモグロビンA1Cも出しております。
思いつくままに記載しましたので、漏れているかもしれません。
また、MELASの脳卒中様発作の発作時の治療および発作を予防するために治験研究が2007年4月から始まる予定です。発作の予防目的で、治験エントリーを募集しますので、主治医の先生にもお話ししてみて下さい。詳しくは日本医師会治験促進センター(
http://www.jmacct.med.or.jp/)に載っております。