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投稿日時:2007-1-10 18:26
投稿者:ゲスト

重症筋無力症との合併について

私は現在38歳の女性です。 
4年前に呼吸筋の筋力低下が始まり、それから3ヶ月以上経て、眼瞼下垂、手足の脱力感があり、テンシロンテストの結果のみで重症筋無力症と診断されました。抗体も筋電図もすべて陰性でした。血漿交換、ガンマグロブリンなど一通りの治療を受けましたが、治療の反応はいまひとつで、構音障害、呼吸症状、近位筋優位の筋力低下(特に下肢)が良くなったり悪くなったりしながら、徐々に悪化しています。

昨年、呼吸症状が徐々に悪化したため、重症筋無力症を専門に診ている先生の元へ転院しました。そこで、血液・髄液中の乳酸・ピルビン酸の値が高く、ミトコンドリア脳筋症の可能性を指摘されました。重症筋無力症かどうかは怪しく、確定診断には至っていません。遺伝子検査の結果では、遺伝子の欠損があると言われましたが、筋生検の結果では筋肉の萎縮は見られるものの、ミトコンドリア脳筋症や他の筋肉疾患の所見は見られないと言われました。脳のCTやMRI、心機能、視力に異常はありませんが、若干聴力が低下しています(自覚症状はありました)。

ご質問ですが、
・筋生検の結果は、筋肉を取る場所や、進行の度合いによって(最初は異常がなくても数年後に出たり…)、変わることがあるのでしょうか。
・重症筋無力症は良くなったり悪くなったりすることが知られていますが、ミトコンドリア脳筋症でも症状の変動はあるのでしょうか。血漿交換、ガンマグロブリン、ステロイドの投与で(効いたせいかは分かりませんが)、眼瞼下垂は夜間のみで、嚥下障害や頸筋低下、腕の挙上困難などは改善しています。
・阻血下運動負荷による乳酸・ピルビン酸の値を測定しました。本来は、エルゴメーターなどを使うようですが、呼吸状態が悪く(バイパップ使用)、下肢・体幹の筋力低下も強く、有酸素運動ができる状態にはありません。無酸素運動下では正常な人でも乳酸値が上昇すると書いてありましたが、どういう意味のある検査なのでしょうか。ちなみに乳酸値は正常上限の3倍くらいの値でした。

投稿日時:2007-1-13 16:30
投稿者:gyuichi

Re: 重症筋無力症との合併について

国立精神・神経センターの後藤雄一です。

重症筋無力症とミトコンドリア病(慢性進行性外眼筋麻痺症候群)との鑑別は時に難しいことがあります。遺伝子検査の結果で欠損があるといういうのは、どのような遺伝子にどのような欠損があるということでしょうか。内容によってはそれで確定診断になります。

さて、ご質問のついての回答ですが、
1)筋生検は採取する場所によって所見が異なる可能性はあります。著しく進行してる箇所からの採取では、筋線維が少なくて判断が十分できない場合があります。また、進行の度合いでも変化する場合がありますが、数年で大きく変化することは少ないと思います。
2)ミトコンドリア脳筋症でも骨格筋症状が変動する場合があります。しかし、眼筋症状が改善することがあるのかどうかは、私はあまり知りません。
3)阻血下運動負荷試験は、骨格筋の代謝異常を検出する際に用います。この負荷試験を行うと、ミトコンドリア機能障害のある方は正常の方に比較して乳酸値が高くなり、その後の回復にも時間がかかります。正常な人でも運動直後は正常値の3倍以上に上がりますし、運動直後、5分、10分、15分、30分と調べると、通常は30分でほとんど正常範囲に復します。いつも乳酸値の高い人は行わなくてもよいですが、ときどき高い方とかミトコンドリア病が特に疑わしい方には、軽度のエネルギー障害でも検査値に異常がでる可能性があるこの試験を行います。また、この試験は糖原病という別の代謝性筋疾患の鑑別にも用いられますし、乳酸・ピルビン酸以外に、アンモニア、尿酸、ヒポキサンチンなどを調べ、別の代謝病のスクリーニングに用いられることがあります。

投稿日時:2007-1-14 21:26
投稿者:ゲスト

Re: 重症筋無力症との合併について

神経センターの後藤雄一様
早速のご返答ありがとうございます。

私は質問させていただいた者の夫です。
本人が一昨日より容態が悪化して入院してしまったため、私では医療の知識がなく内容に関して十分理解できず申し訳ありませんが、内容を本人に伝えます。取り急ぎお礼の返信のみさせていただきます。 ありがとうございました。
また本人からごしつもんさせていただくこともあるかと思いますので、その際はよろしくお願いします。