国立精神・神経センターの後藤雄一です。
ミトコンドリア病は多彩な症状を呈するので、いろいろな症状を持つ方がミトコンドリア病ではないかと疑われるのですが、実は診断を確定するのはとても難しいことであることをご理解いただきたいと思います。特にミトコンドリア病でよく見られる症状が組み合わさって出現している方の場合は比較的確定診断に至ることが多いのですが、症状が乏しい場合(症状が一つでいろいろな原因が考えられる場合)は確定診断に苦慮します。
4、5年前に大学病院で筋生検をされたということですが、その筋を使ってどのような検査をされたのかが重要です。筋細胞の形を見る検査(病理検査)、筋細胞のエネルギー産生をみる検査(生化学検査)、筋細胞の中に存在するミトコンドリアDNAや核DNAをみる検査(遺伝子検査)が主要な三つの検査ですが、これらを一施設ですべてきちんとすることは難しく、私どもの施設では病理検査と遺伝子検査を中心に行っておりますが、生化学検査は手薄です。しかも生化学検査や遺伝子検査をぬかりなくすべて行うことは物理的に無理なことです。したがって、いくつかの施設が互いの長所を生かした診断システムを構築する必要があり、その意味でもこの学会の役割は大きいと考えています。
相談へのお答えですが、ごの内容だけではミトコンドリア病であるかどうかはお答えできない状況です。臨床症状、診察所見、種々の検査所見などを踏まえた詳細な検討が必要と思います。ただし、現在できうる検査をしても必ず診断がつくわけではないこともご理解ください。
「どこの病院にいけば診断や治療ができるか」という情報をいただけないかというご要望も以前からありますので、これも学会としてそのような情報を出せるように考えたいと思います。