東京女子医大小児科の中野です。
以前のご相談でもお答えしましたが呼吸障害はLeigh脳症に出やすい症状のひとつです。脳幹、特に延髄が障害を受けると呼吸器症状として出てきます。脳幹は呼吸も含めて生命の維持に大変重要な場所ですがここが障害されることは重篤と考えられます。
呼吸器症状の出方は、ミトコンドリアの働きをよくする治療を行っても症状が徐々に進んでくる場合もありますし、感染・発熱を契機に症状が急激に進み、その後は症状が緩やかに改善する場合もあります。メールでのご相談では、実際に患者さんを診ていないので呼吸状態が今後どのように推移するか予測するのはむずかしいところがあります。
Leigh脳症の患者さんで呼吸状態が悪いときの呼吸管理についてですが、呼吸はしているが弱い場合はバイパップという補助呼吸器具で気管チューブを口の中に入れずに補助呼吸ができる場合があります。しかし、それでは十分に呼吸が補助できない場合は人工呼吸器を考えます。人工呼吸が長期になる場合は気管切開をせざるを得ません。
気管切開したほうがいいのでしょうかというご質問ですが、人工呼吸、気管切開をするかどうかは、ご両親も主治医も大変悩むところです。私がこれまで診てきた患者さんはケースバイケースです。感染が契機で呼吸が悪くなって一時的に呼吸管理を行った例もありますし、徐々に呼吸状態は悪くなっていましたが意思疎通はあり、訪問学級を受けていた患者さんは人工呼吸・気管切開を行った場合もあります。一方、呼吸状態だけでなく全体的に反応も乏しくなって、患者さんの有意義な人生を考えれば、気管切開を含めて色々な医療行為が患者さんの苦痛を増すだけと考えられる場合はご両親とよく相談して苦痛を増すような治療はしないようにした場合もありました。ですから、対応の仕方は一通りではありません。10の家族がいたら10通り、100の家族がいたら100通りあるといったほうがいいのかもしれません。大切なことは主治医の先生と十分話し合うことです。気管切開を行った場合の合併症はどういうことが考えられるか、人工呼吸から離脱できる可能性はあるのか、長期に人工呼吸を行う場合、家に戻ることはできるのか、そのときにはどういう準備が必要かなどです。主治医の先生とよく相談してみてください。十分納得の行く話し合いができない場合はセカンドオピニオンを聞くと言うのもひとつの方法です。