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投稿日時:2006-10-290 0:30
投稿者:ゲスト

リー脳症と両側線条体壊死症との違いについて

現在11歳の娘ですが、3歳の時にリー脳症と診断され、遺伝子検査を行ったところ、遺伝子には、特徴的な異常が見られないため、その後特発性両側線条体壊死症と診断されました。症状は、大脳基底核に対称的に壊死が見られ、髄液中の乳酸値、ピルビン酸値が、基準より高い値を示していました。身体的には、両手足の麻痺で、自力歩行不能ですが、辛うじて右手でスプーン、鉛筆をはさんで使うことができます。知能はまったく問題なく小学校も普通学級に就学しています。今年4月から、それまで通院していた病院の主治医の先生が退任なさったため、その紹介で、大学付属病院の小児科に通院しております。現在の病院の主治医の先生の診断では、MRIおよび髄液検査の結果からリー脳症であると再度宣告されました。乳酸、ピルビン酸の値を下げるために、ジクロロ酢酸ナトリウムを処方してもらっています。先生のお話では、ジクロロ酢酸ナトリウムの服用により、乳酸、ピルビン酸の値は、正常範囲にあるとのことです。
ところが一週間前に両眼の視力が落ちてしまいました(1.0以上ー>0.1以下)眼科診断上は、異常部位は見られず、視神経の異常と思われますが、小児神経の主治医の先生の話では、MRI,髄液とも、1ヶ月前の検査結果と変化は見られないが、リー脳症の症状が、出てきたものと思われる、今後さらに症状が現れる恐れがあると言われ、視力を回復、治療する策はないのでステロイドをだめもとで試してみるということになりました。視力低下から一週間たちますが回復していません。
ジクロロ酢酸ナトリウムの服用については、先生から現状の維持に有効ということで、処方に合意したのですが、この相談室を見ると否定的見解がでているので不安です。
そこで質問ですが、
1.リー脳症と両側線条体壊死症との違いについて教えてください。
(診断の根拠と予後の違いがあれば)

2.ジクロロ酢酸ナトリウムによる副作用で、視力が落ちる(視野の中央部が見えない状態)例は
ありますか。

3.視力回復のためにできる診断、処置はほかにないでしょうか。
  または、視神経専門の先生でもどうにもならないのでしょうか

投稿日時:2006-10-20 18:36
投稿者:yasukoga

Re: リー脳症と両側線条体壊死症との違いについて

久留米大学医学部の古賀靖敏です。
1.リー脳症と両側線条体壊死症との違いについて。
両側線状体壊死症は、病理画像上の状態呼称であり、診断名ではありません。両側線状体壊死症を来す疾患は様々であり、一過性の窒息のような状態から、一酸化炭素中毒、重金属、毒劇物、除草剤などの薬物中毒、有機酸血症、ミトコンドリア脳筋症などの高乳酸血症を来す疾患、高度な電解質平衡異常(中心橋髄鞘融解症など)まで報告があります。診断は、MRI検査で、両側対称性の大脳基底核領域(特に線状体)のT2、Flair画像でhigh intensity signalがあれば、原因はともかく、両側線状体壊死症の診断がつきます。予後は、原疾患で様々ですが、一過性の異常により起こったものでも、通常は痙性四肢麻痺の後遺症が残る可能性が高い重症な状態です。お子様は、乳酸が高値という事ですが、正常上限の何倍くらい高いのでしょうか?乳酸値が血中で70mg/dl以上常に高ければ、非常に重症と考えます。20-30では、軽症と判断しておりますので、DCAの使用はしておりません。髄液でも同様に解釈しております。
2.ジクロロ酢酸ナトリウムによる副作用で、視力が落ちる(視野の中央部が見えない状態)例は、私は、知りません。
3.視力回復のためにできる診断、処置はほかにないでしょうか。私には、わかりません。

投稿日時:2006-10-20 23:05
投稿者:ゲスト

Re: リー脳症と両側線条体壊死症との違いについて

早速のご回答ありがとうございました。
乳酸値については、具体的数値を押さえていないため、次の診察時に、主治医の先生に確認してみます。

投稿日時:2006-11-6 16:55
投稿者:ゲスト

Re: リー脳症と両側線条体壊死症との違いについて

髄液中の乳酸値、ピルビン酸値を確認しました。今年3月末頃の検査では、乳酸:21.9、ピルビン酸:1.3で、ジクロロ酢酸投与後の4月初めの検査では、乳酸:10.6、ピルビン酸:0.5となりました。8月および10月の検査では、乳酸:8.6および8.9、ピルビン酸:0.3および0.3で正常値内ですが、ジクロロ酢酸の投与は続いています。10月末の血液検査では、乳酸:3.1、ピルビン酸:0.1でした。ジクロロ酢酸の投与は必要なのでしょうか。

投稿日時:2006-11-6 17:57
投稿者:gyuichi

Re: リー脳症と両側線条体壊死症との違いについて

久留米大学医学部小児科の古賀靖敏です。
乳酸ピルビン酸の値は、お嬢様はもともとすごく高いわけではありませんので、比較的軽症なLeigh脳症かもしれません。が、11歳になられるまで、通常学級での生活をされているという事で、ジクロロ酢酸をやめないといけない理由は無いと思います。筋力の低下が顕著になる、飲み込みが悪くなるなどの症状が出た場合、神経伝導速度などを検査されて、末梢神経障害の有無を判断されればと思います。ジクロロ酢酸の使用に関しては、主治医の先生とよく相談されて、決定して下さい。経験的には、重症なLeigh脳症は、10歳以前に亡くなることが多く、どのような治療でも、病気の進行は止められません。その意味でも、お嬢様は軽症だと思います。眼の状態はいかがでしょうか?心配ですね。

投稿日時:2006-11-8 14:53
投稿者:ゲスト

Re: リー脳症と両側線条体壊死症との違いについて

ご回答ありがとうございます。
視力の状態は、回復方向になく、悪化しつつあるように見えます。
今日、右手が痙攣しているとのこと。これまで不随意運動は、ありましたが、痙攣のような症状はなかったので、最近の症状悪化が心配です。
ジクロロ酢酸の投与は、今年4月からで、担当主治医が変わったことにより診断名が替わったことと、MRIでの変化が見られない、乳酸、ピルビン酸が規定値内でありながらの新たな症状の発現に不安な状態が続いています。痙攣については、病院に電話して指示を仰ぎます。

投稿日時:2006-11-8 17:21
投稿者:yasukoga

Re: リー脳症と両側線条体壊死症との違いについて

久留米大学医学部小児科の古賀靖敏です。
痙攣様の動作があるとのことで、ご心配でしょう。脳波の検査と抗痙攣剤の検討が必要ですね。
MRIでの変化が見られない、乳酸、ピルビン酸が規定値内ということ、現在11歳で通常学校に通学されている事を合わせて考えると、典型的なLeigh脳症とは言えないのかもしれません。実際は、ミトコンドリア病と診断がつかない病気の方が、たくさんあるのです。
急激に視力低下を来すミトコンドリア病にレーバー遺伝性視神経萎縮症があります。しかし、男女比は、約70%が男性に起こりますので、お子様には当てはまらないかも知れません。ロシア人15名のミトコンドリア遺伝子解析をしましたら、特徴的なミトコンドリア遺伝子の変異がみられます。しかし、家族歴の無い方も20%にいらっしゃいましたので、完全には否定できません。失明はたとえ片側から始まっても、その多くは一ヶ月以内に両眼失明する可能性が高い病気で、治療法の無い難病です。
ご心配をおかけする内容になってしましました。申し訳ありません。急激な視力低下でMRI、乳酸ピルビン酸に異常が無い場合、鑑別に挙げるべき病気がレーバー遺伝性視神経萎縮症です。

投稿日時:2006-11-14 20:45
投稿者:ゲスト

Re: リー脳症と両側線条体壊死症との違いについて

ご回答ありがとうございます。主治医の先生もレーバー病も考えられるとのことでした。他の病院のレーバー病や視神経に詳しい先生に相談して戴き新たな検査が必要ならば、紹介していただくようお願いしています。痙攣の件は、その日のみで、その後症状は出ていません。本日、脳波の検査を実施して、来週月曜日の診察の時に結果を伺うことになっています。