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投稿日時:2006-8-20 22:51
投稿者:ゲスト

MERRFと確定診断された息子

はじめまして。神奈川県在住のMと申します。
私どもの息子が、MERRFです。

仮死状態で生まれ、1歳のときに軽い脳性麻痺があるといわれましたが、どうにか独歩が可能な状態になりました。
しかし、小学校卒業した後ぐらいから、ミオクルーヌスてんかんを発症し、その後も歩行障害や知的退行など、障害は悪化する一方でした。高校卒業後は、ついに独歩が出来なくなり、車椅子出の生活となりました。23歳のときに検査を受け、ミトコンドリアミオパチー(MERRF)と診断され、四肢体幹機能障害1種1級の障害者手帳を取得しました。

現在(28歳)は、日常生活は全介助が必要で、知的退行もかなり進んでいます。四肢の麻痺は重い状態で車椅子を使用しています。体格は、かなりの肥満があり食事制限をしています。

ほとんど、MERRFに関する情報がなく、どのような症状を取り、予後はどうなのでしょうか?。症状の進行を少しでも抑える方法はありますでしょうか?ほかの方の状況や注意すべきこと、どのように家族として接すればよいか、友達にはどのように説明すべきか、など、色々お聞きしたいことがあります。かかりつけの病院でも、なかなか情報が少ない状態です。

わらをもつかむ思いでこちらへ参りました。
質問ばかりで申し訳ありません。
なにとぞ、よろしくお願いします。

投稿日時:2006-8-22 17:50
投稿者:gyuichi

Re: MERRFと確定診断された息子 

精神・神経センターの後藤です。

MERRFは私どものところで診断した症例数はMELAS例の1/10程度であり、MELASに比較するとそれほど多くはありません。26例のまとめでは、発症年齢が2-42歳と幅があり、0-5歳が15%、6-9歳が35%、10-19歳が31%、20-29歳が8%、30-39歳が9%、40歳以上が4%です。

主な臨床症状としては、ミオクローヌス(筋肉がピクピク動く)が100%、けいれんが88%、小脳失調(体のふらつきや指先などの震えなど)が80%、筋症状(筋力低下など)72%、知能障害が64%、感音性難聴(耳が聞こえにくい)が32%、視神経萎縮(ものが見えにくい)が24%、心筋症が16%となっています。

予後を左右するものとして心臓の状態が大事です。筋症状のためにあまり動かないので心筋症があっても息切れするなどの症状が現れにくいと思いますが、定期的な検診が必要です。心電図や心エコーの検査をして、心臓の機能を診てもらうことが重要です。

MERRFもMELASと同様に、変異ミトコンドリアDNA(mtDNA)が見つかることが多く(80%の症例)、細胞の中で変異を持つmtDNAと正常なmtDNAが混在して存在しています(ヘテロプラスミーといいます)。この変異率が高い細胞が機能障害を起こしたり、細胞自体が消失したりして、組織や臓器の症状(いわゆる臨床症状)を呈します。脳の細胞や心臓の細胞は、失われると元どおりになる(再生する)ことが難しいので、症状は横ばいか進むことになります。筋肉や肝臓の細胞などは、分裂したり再生したりするので、症状が改善する可能性があります。このように、細胞のなかの変異率や再生するかどうかという細胞の性質によって、今後の状況が大きく違います。実際は、どの細胞にどれくらいの変異mtDNAが存在しているかを知ることはできませんので、将来の症状の出現予測はたいへんむずかしいということになります。

ミトコンドリアの機能を高めるために、コエンザイムQやビタミンなどを投与しますが、その効果は受け取る細胞によって異なると予想されます。このような治療で失われた細胞をもとに戻すことはできないので根本的な治療にはならないとは思いますが、残っている細胞を最大限活用させることで機能がある程度回復できる可能性は残っていると考えています。

MERRFの場合も、他のミトコンドリア病のように、いろいろな組織や臓器の障害(症状)がでますが、その症状に応じた対処法がある場合はそれを行うことが大事です。また栄養もとても大事です。必要なカロリーをとって、体全体の代謝をたもつことも重要ですし、ビタミン、必須栄養素、必須金属などを食事からきちんととることが望ましいと思います。肥満については、単なるカロリーのとりすぎなのか、糖尿病の兆しがないのかも診ておく必要があるかもしれません。

以上、長々書きましたが、すこしでもこの情報がお役に立てば幸いです。

投稿日時:2006-8-22 21:20
投稿者:ゲスト

Re: MERRFと確定診断された息子

お返事ありがとうございます。
大変、役に立つ情報を頂き感謝しています。
つきましては、数点追加で質問をさせてください。

1.運動機能の障害について、どのような推移をたどり、予後はどのような状態なのでしょうか?麻痺の形態など教えていただけると幸いです。

2.知的退行についての予後についても教えていただけると幸いです。

3.意識障害が出る可能性はあるのでしょうか?文献では、ミトコンドリアミオパチーで、意識障害が出る可能性があるとかかれていました。これは、脳が侵されるためでしょうか?

質問ばかりで申し訳ありませんが、よろしくお願いします。

投稿日時:2006-8-24 16:40
投稿者:gyuichi

Re: MERRFと確定診断された息子

1.運動機能の障害について
 障害のでかたについては、決まったパターンはないと思います。筋肉を動かすためには、脳の運動野と呼ばれるところにある運動神経、スムーズな動きに必要な神経(小脳や基底核にある神経)、手足を動かす筋肉に直接つながっている脊髄から出ている運動神経、筋肉などが必要です。MERRFの場合は、筋肉と小脳の神経がやられやすいので、筋力低下(力が入らない)、運動がスムーズにできない(失調といいます)がおきると考えられます。しかし、どこの筋肉から筋力が落ちるのか、小脳の障害の部位や程度、運動野の神経細胞の障害や脊髄からでている運動神経の障害の合併など複雑であり、一概に決まったパターンで障害が現れるというわけではないと思います。
2.知的退行
 こちらは、ものを考える、記憶するなどの主に脳の前の方や中心部の神経細胞が障害されることでおきると思います。前回も書きましたが、それぞれの神経細胞の障害程度がまちまちですから、どのようなパターンで知能低下がおきてくるのかも予想しにくいと思います。脳の細胞は基本的には障害を受けると消失しますので、その担っていた機能が失われ回復することは難しいと考えられます。ただ、消失した神経細胞の近くにいる神経細胞がそれを補うように働いたり、再生可能な神経細胞が増えて機能を補う可能性は否定はできません。
3.意識障害
 意識障害の原因にはいくつかあります。メラスという臨床病型は、意識障害をともなう卒中様発作を特徴とするので読まれたものにはそのようなことが書かれていたのかと思います。MERRF患者でも、ときに脳卒中様発作を起こすという報告がありますので注意が必要です。それ以外でも、けいれんにともなって意識が消失する場合もありえます。また心臓の症状として意識を失う可能性もありますので、すべてが脳由来ということではありません。