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投稿日時:2006-8-17 0:26
投稿者:ゲスト

乳酸 ピルビン酸などの諸検査について

もしかしたら、以前の質問と重なるかもしれないのをお詫びいたします。嘔吐発作の件で質問させていただいた者です。
けいれん発作や嘔吐発作などが現れた場合、血中および髄液中の乳酸ピルビン酸やMRIなどが正常範囲内にあるにもかかわらず、臨床症状からミトコンドリア病を疑う場合はあるのでしょうか。低身長や知能、運動面での遅れなどは今のところ目立ちません。
ミトコンドリア類似の発作があるとき、乳酸ピルビン酸などの諸検査は異常なくても、次回発作を迎える危険というのは考えに入れておくべきなのでしょうか。娘の場合、遺伝子検査は髄液中の乳酸ピルビン酸が上昇したときはじめて施行しました(結果ははっきりと同定出来ませんでした。確定診断は筋生検によりました)。ミトコンドリア病類似症状があった場合、以後激しい運動などは避けた方がよい、ビタミン剤などを予防的に服用することの有用性、定期的な検査の必要性の有無など。なかなかお答えが難しいとは存じますがお考えをお聞かせ願えたら幸いです。

投稿日時:2006-8-18 0:34
投稿者:yasukoga

Re: 乳酸 ピルビン酸などの諸検査について 

久留米大学医学部小児科の古賀靖敏です。
ミトコンドリア病の診断をいつ、どのような症状があった場合に積極的に行ったらよいのかに関するご質問と解釈しましたが、よろしいでしょうか?
以前の投稿で、私が理解しましたのは、14歳のお嬢様がメラスと診断された。7歳時の症状からミトコンドリア病が疑われたが、最終的に診断がついたのは3年後で、筋生検が診断の決めてであった。しかし、お嬢様には遺伝子異常の典型的なものは見つからず、臨床的メラスということで現在治療されている。息子様が現在7歳で、頭痛、嘔吐というお嬢様と同じ症状があったが、今は元気であり、MRIでも異常は見られない。低身長や知能、運動面での遅れなどは今のところ目立たない。血中および髄液中の乳酸ピルビン酸やMRIなどが正常範囲内にあるにもかかわらず、臨床症状からミトコンドリア病を疑う場合はあるのでしょうか。ということですね。

メラスで典型的なミトコンドリアの遺伝子異常をお持ちの方は、母系遺伝を示すことから、そのご兄弟にも体質は伝わる可能性はあります。しかし、以前にも書きましたが、同じご姉弟でも、体質はかなり異なりますし、体質(遺伝子異常)が少ししか伝わらなかった方は、症状が無く、一生元気な人も多いのです。運動音痴、はきやすい、背が小さい、頭痛持ちであり、よく吐いてぐったりする、点滴しなければ元気にならないなど、そのような症状が続いているのであれば、その時点で検査されればと思います。私が外来でフォローアップしています、メラスの患者様は、ご兄弟がメラスと診断されて、かつ典型的なミトコンドリアの遺伝子異常をお持ちの方は、アルギニンや血管内皮機能改善療法で発作が予防可能ですので、同胞の方も積極的に診断し、異常の体質が多く伝わっていれば、発症前から投薬を行っております。

しかし、典型的なミトコンドリア遺伝子異常が見つからない臨床的メラス(恐らくお嬢様の場合がこちらと考えますが)であれば、効果的治療法は残念ながら少ないことから、症状が濃厚に出現し、臨床的にメラスが疑われる様になるまで積極的な診断検査は、家族の希望があるまでしない方針にしております。

結局、臨床症状がそろわない時期に診断をつけることは非常に難しいのです。花の色を判断するのに、赤い花びらになるのか、白い花びらになるのかは、種子を見てもわかりません。芽が出て、蕾から熟して、花びらが広がったときに初めて花びらの色がわかるものです。しかし、遺伝子診断は症状が出るまえから診断が可能です。花屋さんは、種子を持っていてもその元株(親)がどのような花を付けるのかわかっているものです。遺伝子診断は症状が出るまえから、わかってしまいますので、花屋さんの親株について持ってある情報の様なものです。この点、私たち医師は、患者様が病気について知る権利と同様、病気を知りたくない権利も同じように有してある事を理解しております。従って、治療法が無い病気であればなおさら、その遺伝子診断は慎重に事を進めなければならないと思っております。

以上お答えになっていないと思いますが、言いたいことは、以前に記載しましたが、症状がそろって、必要と思われたときに医師に相談されればベストと思います。とくに、お嬢様を診てある先生であれば、なお、最善の答えが得られると思います。


投稿日時:2006-8-16 15:37
投稿者:yasukoga

ありがとうございました

先生、お忙しい中ご丁寧なご返答を下さりありがとうございました。
今日娘の診察日であり、主治医に息子の事を話したら、「自家中毒でしょう!!」と断言されました。娘は何十回と入院して主治医にはそのたび大変なご苦労をおかけしています。主治医もはっきりしない間は最悪のことを想定したくないというお気持ちなのだと思いました。もう少し冷静に経過をみてあらためて主治医と相談してみます。娘の発作は頻発していますがアルギUの内服や、発作時の点滴にて、発作のおさまりは以前より良くなってきているような印象をうけます。
娘の治療も希望をもってのぞんでまいりたいと思います。
本当にありがとうございました。