メールを拝見しました。
後藤先生のいわれるように、主治医にお尋ねになるのが一番よい方法だと思います。でも、その主治医の説明がよく分からなくてご質問されたのだと思います。
　ミトコンドリア病の患者さんで尿の乳酸値で、病気のことを判定することがあるのか、いろいろ調べてみました。それで返事が遅れました。でも、私の調べて範囲では見つかりませんでした。尿で検査できるのならば、痛い採血をしなくていいので、ぜひ採用したいです。確かにスポーツなどの後に尿の乳酸値を測ると上昇しているとの記載はあります。
　私たちはは血液の乳酸値が高いとミトコンドリアの機能が悪いのだと判定します。乳酸値の基準値は、成人では0.44-1.78mmol/L(4-16mg/dL)であり、mg/dL単位からmmol/L(SI単位)への換算係数は、0.111とされています。それより高い値だと異常とされています。ただし、ミトコンドリア病では血液の乳酸値は正常となることもあります。血液の乳酸値はからだの調子で左右されるようです。
　メラスとか、中枢神経が侵される病気では血液の乳酸値は正常でも髄液の乳酸値がとても高くなることが多いです。ですから、メラスやマーフの患者さんでは脊髄液を採取されます。血液の乳酸値だけではちょっと不安です。脊髄液を背中に針をさして取る。あまり、痛みもなく、安全なのですが、脊髄液と聞いただけでちょっと怖いですね。おしっこで何か分かればずっとよいですね。
　結論です。今回の尿での尿酸値の測定がミトコンドリア病の経過をみるのに役立つのかどうか、主治医にお聞きになるといいと思います。もしそうならば、私も勉強したく思います。そのくらいのことならば、こわくて、無愛想な（たとえばの話です）主治医にもお聞きになれますよね。

　中野先生、古賀先生、尿の乳酸値でミトコンドリア病の経過をみるとの報告はありますか？太田先生、尿の乳酸値の測定の意義はありますか？ご回答をお願いします。

埜中征哉

埜中先生、丁寧なお返事を下さり有難うございました。主治医はとても良い先生です。この病気を早めに察知してくださり、感謝しても仕切れないと思っております。こちらの質問にも丁寧に答えて下さいます。ですが、診察室にて、頂いたデータを元に、ご説明頂いても、その時点では判っているつもりですが、帰宅後にもう一度見直して、疑問が出てくることもしばしば…。言葉は耳で聞いて、頭で判断しても、時間と共に判らなくなることが有ります。特に、医学の知識の乏しい素人の私などは。ですので、こうやってこのページで質問をさせて頂き、文字としてご回答頂くと、大変判りやすく思います。的外れな質問をしてしまったのではと、投稿後に後悔して、お返事が無い時や、お返事の内容が期待していたものとは違っていたり（失礼な言い方ですが）すると、猛烈に反省してしまいます。ですが、親として、子どもの病気を少しでも理解し、より良い生活をさせてやりたいと言う、必死の思いで、投稿させて頂いている事は、ご理解頂きたいと思うのです。お忙しい中、ご質問にお答え下さっている諸先生方には、大変感謝しております。有難うございました。

久留米大学医学部小児科の古賀靖敏です。
私も、このような表示は、ミトコンドリア病の検査項目ではあまりみたことがありません。尿中のガスマス、タンデムマスといわれる様な、有機酸血症をスクリーニング検査するやり方では、このような表示法が取られます。
尿中の乳酸は、検査時の脱水の程度により尿の濃さにより大きく変動します。そのためにmgcreatinin当りでの表示方法となっております。しかし、このような方法は、ミトコンドリア病のコントロールする上では一般的ではありませんし、私にはよくわかりません。

京女子医大小児科の中野です。
尿の乳酸の意義についての質問ですね。
わたし達はミトコンドリア脳筋症なのかほかの代謝異常なのかの診断の目的で尿有機酸分析を行いますがその尿有機酸分析のなかで乳酸値をみています。
尿には体内のいらなくなったもの・老廃物が排泄されるので血液に比べて、有機酸などの体内の異常蓄積物の濃度が尿では高くなります。昔、アメリカ、シカゴのD.A.Stumpf教授が女子医大で講演されたときに尿乳酸は血液乳酸より数十倍鋭敏に異常を検出できると話していました。こういった理由でミトコンドリア脳筋症の診断に有力な手段の一つです。しかし、現在、尿乳酸は経時的変化の評価には用いず血液、髄液を用いています。その理由は有機酸分析の結果が出るまで数週間かかる一方で血液、髄液ではどこの施設でも数時間から数日で測定結果が出るからです。ミトコンドリア脳筋症の場合、梗塞様の変化とか発熱などで急にぐったりなったりなど急な変化が出るが場合がありますが、その場合には早く結果がわかる血液の乳酸値のほうが優れています。
乳酸と臨床症状の関係ですが、一般的にはミトコンドリア機能が低下すると乳酸値は上昇します。しかし、さらに考慮しておかなければならないファクター、運動量があります。私が外来で診察していて見た目にはどうみてもよくなっているのに乳酸値が高いままで低くならない患児がいました。よくよく話を聞くと調子がよくてそれに伴い運動量が増えていてそれが原因とわかりました。一方、逆の場合もあります。乳酸値は下がっているが臨床的にはよくならず、活動が低下しているというように。患者さんの状態を把握するのには乳酸値のみでなく臨床症状、活動性などを一緒にみて評価する必要性があります。