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投稿日時:2006-7-27 15:01
投稿者:ゲスト

本日、3歳の息子が「ミトコンドリア病と診断されました

3歳になる男の子の母です。息子の父親はイギリス人で心臓病の家系の人で本人も現在ピースメーカーをしているようです。息子の父親とは妊娠中に別れ、現在は、今の夫と再婚しています。
本日、息子がミトコンドリア病ではないかと医師から言われました。MRや他の検査をしたのですが、今ままでの検査では脳と神経に異常はないという話だったのに、息子の歩く姿のビデオを見た後、ミトコンドリア病の症状だと言われました。
おそらくそうなのだと私も思います。

質問があります。
1.ミトコンドリア病は遺伝子の異常の病気だということで、父親と母親の両方から、または母親のほうからの遺伝性の病気だという風にインターネットに記載されていました。
本当でしょうか?

それが事実とすれば、母親である私が原因で息子がミトコンドリア病なのでしょうか?
原因を調べるとすれば、母親と父親の遺伝子の両方を検査する必要ありますか?
だとすれば、私だけでなく、息子の父親の検査も必要でしょうか?
息子の父親とは今はコンタクトも無く、あまりにひどかったので、特に会いたくありませんし、一切の関係を持ちたくありません。しかも、息子は自分の父親が私の今の夫だと信じています。
ですから、息子がどんな種類のミトコンドリア病なのか検査するの当たり、父親の検査も必要になるのか否か、教えてください。

2.息子は、足が偏平足のようで、歩き出したのも1才半と遅く、2歳ぐらいから歩き方がおかしくなり、言葉もどもりはじめました。物覚えは良いので、あたまも悪くないと思いますが、時々、つじつまが合わないことを言い出したり、質問に対する答えがまったく的外れだったりと、知能が遅れているのかなと思う瞬間も出てきています。
 そして、最初は時々しかなかったのですが、最近では、体のゆれやバランスをとれずにこけたり、ロボットのようなへんな動きをする回数が頻繁になってきました。
 ちょっと前から、体の筋肉が常にピクピクしています。徐々にそれが頻繁かつ顕著になってきまして、息子の体に触らなくても、外部から筋肉を見ているだけでわかるようになりました。
 保育園でも、よくバランスを崩してこけるようになったり、小さいものをつかむもうとすると指が震えて、つかめなかったりと、異常さが顕著になってきたと言います。
小児麻痺や神経の異常ではないかということで、神経課に通いました。

脳波を調べ、MRもしましたが、特に異常ではないといわれて安心したのですが、本日、呼ばれて、かなり高い確率でミトコンドリア病だと宣言されました。
本日までミトコンドリア病という名前さえ聞いたことが無く、何の知識もありませんが、ネットで調べて呼んだ限りでは、動揺を隠せません。しかし、それが事実なら受け入れるしかありません。
そこで、2つ目の質問です。

2.上記の症状は本当にミトコンドリア病なのでしょうか?
 幼少期(幼児期)に発病すると重症で、10歳から20歳までに死亡するケースも多いと書かれていましたし、特に完治する治療法もないと記載されていました。治療法は対処療法しかなく、この治療をすれば治るという治療はまだ開発されていないと・・・
本当ですか?
息子はこの病気が進行するにしたがって、死んでしまう可能性があるということでしょうか?
しかも、その進行を止め、改善させてゆける方法もないということでしょうか?

3.上記の質問に類似しますが、息子がどんな種類のミトコンドリア病なのかは来月入院して検査してからわかるのですが、いずれにせよ、親である私はどうしてあげたらよいでしょうか?
看病しても治る病気ではないと思いますが、食事内容とか運動とか、なにかのリハビリとか、病気を治すために、自宅でしてあげられることや、注意すべきことはないのでしょうか?
これをしてあげるべきで、これをしてはならない、とか、具体的にアドバイスいただければ幸いです。

4.今までにミトコンドリア病が完治した例はありますか?
 幼児期に発病した重症の場合でも、健康になって、普通に生きてゆけるのでしょうか?
 それとも、20歳までに死んでしまうのでしょうか?
 病気が進行するにつれ、どういう状況にこれからなってゆくのでしょうか?
 死亡しなくても、寝たきりになるとか、失明するとか、筋肉が動かなくなるとか、そういう悲惨な状況で生きてゆくしかなくなるのでしょうか?
 重症のミトコンドリア病の患者さんのご家族の方は、どのように対処しておられるのでしょうか?

 本当に基本的なことばかり質問してすいませんが、教えてください。

 横浜市 SR

投稿日時:2006-7-28 15:57
投稿者:ゲスト

Re: 本日、3歳の息子が「ミトコンドリア病と診断されました 

国立精神・神経センターの後藤雄一です。
ミトコンドリア病という診断を受けた時に、情報が不十分でご心配されたことと思います。この相談室ではできるだけ正確な新しい情報をご提供したいと考えております。書かれた文面だけではご子息の病状の把握が完全ではないので、的確にお答えでいないことがありますことを最初にお断りしておきます。

すでにこれまでの質問に対する回答の際に何度か述べておりますように、ミトコンドリア病の原因は、ミトコンドリア内にあるDNAであるミトコンドリアDNAの変異でも、通常の細胞核と呼ばれるところにある核DNA上の遺伝子の変異でもおきますので、ミトコンドリアDNAや核DNAを調べて変異が見つかるとミトコンドリア病の確定診断になります。

しかし、DNA検査は万能ではなく、まだ原因が分かっていないミトコンドリア病の場合はDNA以外の方法によらないとなりません。その場合は、骨格筋を生検してミトコンドリアの数が増えているとか、大きくなっているとかの形の変化を見たり(病理検査といいます)、エネルギー産生にかかわるミトコンドリアの機能を調べたり(生化学検査といいます)して、ミトコンドリア異常を確認します。確認できたら、ミトコンドリア病と診断できるのです。

したがって、ミトコンドリア病の確定診断のための検査はDNA検査、病理検査、生化学検査を総合的に行います。しかし、そのそれぞれの検査が専門的な知識と作業が必要なために、一般的にミトコンドリア病の診断はむずかしいのです。「かなり高い確率でミトコンドリア病」という言い方がされるのは、上の3種類の検査が確実にできておらず、ミトコンドリア病が疑わしいという状態と考えられます。ただ、上記の3種類の検査をしても確実なミトコンドリアの異常が捉えられず、疑いのままになることもしばしが経験します。

1.遺伝性について
 ミトコンドリア病の原因は、ミトコンドリアDNA変異の場合も、核DNA上の遺伝子変異の場合もあり、その遺伝様式も様々です。すべてが母から変異ミトコンドリアDNAが伝わって起きるものであるというわけではありません。ま拭△柑丗?DNA検査を行う際に、父母のDNA検査を行うことは基本的に必要ありません。

2.ミトコンドリア病の症状、経過、予後
 ミトコンドリア病の原因も様々ですが、さらに症状はもっと様々です。脳の症状だけではなく、心臓、筋肉、腎臓、内分泌、消化管、眼、耳、皮膚など全身のあらゆる細胞にミトコンドリアがありますので、症状もまちまちです。また、その症状の出る時期、ゆっくり進むのか急激に進むのか、回復するのかなど、いろいろな場合が報告されています。完治する治療法がないというのは、障害されているミトコンドリアの機能を完全に回復させる方法は、今のところないという意味です。しかし、たとえばミトコンドリア病で認める糖尿病ではインシュリンを使うことでコントロールできますし、難聴には人工内耳などを使うことで治療ができる場合があります。ですから、ミトコンドリア病は治療できないというのはあまりにおおざっぱな言い方であって、どのような症状がどの程度で出現しているかをみて対処して行くことが肝心と思います。

3.親として何かしてあげたい
 だれもがそう思うと思います。まず、正確な診断を含めて、ご子息の現在の状況がどういうことになっているのかを把握することが大事です。そのうえで、具体的な対応を考えていくことになります。ミトコンドリア病の中の、さらに同じ病名がついても、それぞれの患者様の状況は異なります。

4.治癒の可能性
 ミトコンドリア病の経過は様々です。出生時にすでに発症している例もあれば、60歳以降になってはじめてミトコンドリア病と分かるという例もあります。乳児期に重篤な症状(筋力低下、心筋障害、腎障害など)になっても、その後自然に回復し正常に生活することができる乳児良性型チトクロームc酸化酵素欠損症という病気もあります。ミトコンドリア病においても、まだまだ分かっていないことがたくさんあります。

今回のご相談に際して、ミトコンドリア病という病名を聞いてたいへんショックを受けられていることをお察し申し上げます。それでも、この病気の研究を行って新しい治療の開発をめざしている日本や世界の医師や研究者が日夜がんばっています。ミトコンドリア学会は、そのような医師や研究者が共同して研究成果をあげるための組織です。アジア、アメリカ、ヨーロッパなどの同様な組織と連携してさらに活動を進めていきます。また、患者家族の会をはじめとするサポート団体が日本だけではなく、世界的にできています。どうぞ悲観なさらずに、ご子息のためにできることを1つ1つ捜してやっていきましょう。ご協力させていただきます。

投稿日時:2006-7-29 17:01
投稿者:ゲスト

Re: 本日、3歳の息子が「ミトコンドリア病と診断されました

後藤先生

ありがとうございます。大変よく判りました。
適切なアドバイス、かつあたたかいお心配りに感謝申し上げます。ありがとうございました。
お察しの通り、夫婦ともども大変なショックで、どう受け止めてよいかわからない状態です。
私は逆境に強く、頑張り屋のほうですが、こればかりは私の努力ではどうにもなりません。相手はDNAの病気なのですから。

自分の子ともがそうであるかもしれないことを告げず、あるこの種のことに知識のある友人に尋ねたら、「幼少時(1歳ぐらい)にミトコンドリア病にかかった場合、重症のケースが多く、進行も早く、10歳まで生きれれば御の字だ。小児麻痺みたいになって、知恵遅れになり、寝たきりになることが多いみたいで、治らない」と聞きました。
よけいにショックと恐怖が深まってしまいました。

この病気は難病で、よく解明されてない。
対処療法以外、何も出来ない。
つまり、治らない・・・
重症患者は、死ぬのを待つしかない。
10歳まで生きない。

そう言われてしまうと、言葉もありません。

判っていることは、日に日に目に見えて状態が悪化していることがわかるだけです。
最近特に目立って動作がぎこちなくなり、ロボットのような感じになって、3歳なのによだれまでたらしはじめました。

まずは、8月に最終的な検査をします。
入院して詳細に調べるそうです。
その結果次第ですが、おそらくミトコンドリアだろうから、覚悟をしておいてほしいみたいなことを言われました。

息子は2歳までには発病したと思われます。
すると重症ですか?
その場合、本当に10歳まで生きたらよいほうなのですか?
3歳の息子があと生きても7年だなんで、それはあまりに残酷です。
近い将来、彼は寝たきりになったり、失明したり、全身の筋肉が曲がったり、知能障害がでたりしますか?
症状は様々でしょうが、どういうのが一般的でしょうか。

また、この病気を治すための、どういう薬がありますか?
そもそも、ミトコンドリアの重症患者は完治しますか?
完治例はありますか?

沢山質問してすいません。
8月25日に入院して検査をします。
もし、それまでにも病気はどんどん進行しているなら、一日も早いほうがよいのですか?
8月25日までは長いです。

色々とご迷惑をおかけしますが、よろしくお願いいたします。

横浜 S 

投稿日時:2006-7-31 13:25
投稿者:gyuichi

Re: 本日、3歳の息子が「ミトコンドリア病と診断されました

ご心配の様子はよくわかります。ただ、一度にたくさんの事柄についてお答えしたり、病気のとらえ方や今後の方針などについては簡単に決められないものも含んでいますので、この掲示板では無理があります。

8月25日に入院して詳しい検査をするということですね。私は、その結果をみてから具体的なことを考えることにしたほうがよろしいと思います。まだミトコンドリア病かどうかも確定しない、ミトコンドリア病の中のどのような臨床病型にあたるか、どのような原因によるか、脳やその他の臓器の状況がどのようになっているのか、などに関わる情報が不足しているところで、詳細にお答えすることは困難です。

東京都小平市にあります国立精神・神経センター武蔵病院では、私も外来をしております。ご希望があればご相談にいらしてください。

国立精神・神経センター武蔵病院小児神経科 後藤雄一

投稿日時:2006-8-16 9:23
投稿者:ゲスト

Re: 本日、3歳の息子が「ミトコンドリア病と診断されました

ご親切にありがとうございます。

私たち夫婦はショックが大きく、動揺してしまいました。
すいません。どう受け止めてよいか判らなくとも、受け入れなければならないのですから、冷静に、今できることを一つ一つしてゆくしかありません。

先生には、再検査の結果を見てから、ご連絡申し上げます。

今後とも宜しくお願いいたします。

横浜S