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投稿日時:2006-7-12 18:53
投稿者:ゲスト

ミトコンドリア脳筋症と、血中の乳酸値・ピルビン酸値

MELAS(A3243G)の7歳の息子の検査値で、お尋ねしたいのですが、
先月、血液検査をし、血中の乳酸・ピルビン酸値を計りました。結果、乳酸値84.2/ピルビン酸1.64でした。主治医によると、正常値よりは高いが、変動があるので、この数値ばかりを余り気にする事は無いという事でした。丁度、1年前には、乳酸値77.1/ピルビン酸値1.99でした。年に数回測定していただいていますが、この数値を計る必要性をお伺いしたく思います。体調の変化と、数値の関連性は余り無いのでしょうか?また、アルギニンの血中濃度の測定では、124と言う事でした。この結果今服用しているアルギニンの量で暫く続ける事になっています。

投稿日時:2007-7-13 10:42
投稿者:yasukoga

Re: ミトコンドリア脳筋症と、血中の乳酸値・ピルビン酸値 

久留米大学医学部小児科の古賀靖敏です。
乳酸・ピルビン酸値を測る必要性に関してのご質問ですね。乳酸・ピルビン酸の値は、ミトコンドリア内でのエネルギー代謝の流れがうまくいっているのかどうかの指標になります。
喩えて言いますと、雨が屋根に降ってそれが雨どいをつたって排水溝に入り、川に流れ、それが最終的に海に到達します。この自然の流れの中で、排水溝につまりが起きますと、水があふれてしまいます。このあふれた状態が、体の中で起り、エネルギー代謝がうまく流れなくなった場合に観察される現象が、乳酸・ピルビン酸値の高値となります。正常の値に比較し、値が高くなると言うことは、体の中で物質の流れが滞っている事を示します。お子様の値は、正常の3−4倍高い状態が常にあるようですので、ミトコンドリア病の中でも重症と言えると思います。値が高い低いだけでなく、お子様のいつもの値に比較して、値がどうなっているのかが大切です。脳卒中様の発作の場合、お子様のいつもの値に比較し、値がさらに高くなることがあります。また、両者の比、つまりL/P比も細胞内の異常値をよく反映することになりますので、乳酸・ピルビン酸の値とともに、L/P比をあわせて評価することが大切です。ピルビン酸を補充することは、L/P比の改善につながりますが、まだ、一般的治療法ではありません。L/P比は、正常では10ですが、20くらいまで上昇する方は多くいらっしゃいます。お子様は40くらいですので、この点も重症と考えられます。アミンの酸分析では、高アラニン血症として見られます。発熱、脱水、ストレスなどで、値が上昇する事がわかっていますので、介護される場合に注意が必要です。お子様の場合、高乳酸血症が強いですので、抗アシドーシス剤として、重曹、ウラリットなどは必要と思います。処方していただいたほうが良いと思います。

投稿日時:2006-7-13 12:08
投稿者:ゲスト

Re: ミトコンドリア脳筋症と、血中の乳酸値・ピルビン酸値

古賀先生、大変わかりやすいご説明有難う御座いました。このご説明で、検査の必要性が良く理解できました。今後も注意深く見守って行きたいと思います。お薬の件、早速主治医にお願いしたいと思います。お忙しい中、本当に有難う御座いました。

投稿日時:2006-7-27 20:06
投稿者:ゲスト

Re: ミトコンドリア脳筋症と、血中の乳酸値・ピルビン酸値

運動ができるようになる様な薬は、ないのですか?
引用:
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yasukogaさんは書きました:
久留米大学医学部小児科の古賀靖敏です。
乳酸・ピルビン酸値を測る必要性に関してのご質問ですね。乳酸・ピルビン酸の値は、ミトコンドリア内でのエネルギー代謝の流れがうまくいっているのかどうかの指標になります。
喩えて言いますと、雨が屋根に降ってそれが雨どいをつたって排水溝に入り、川に流れ、それが最終的に海に到達します。この自然の流れの中で、排水溝につまりが起きますと、水があふれてしまいます。このあふれた状態が、体の中で起り、エネルギー代謝がうまく流れなくなった場合に観察される現象が、乳酸・ピルビン酸値の高値となります。正常の値に比較し、値が高くなると言うことは、体の中で物質の流れが滞っている事を示します。お子様の値は、正常の3−4倍高い状態が常にあるようですので、ミトコンドリア病の中でも重症と言えると思います。値が高い低いだけでなく、お子様のいつもの値に比較して、値がどうなっているのかが大切です。脳卒中様の発作の場合、お子様のいつもの値に比較し、値がさらに高くなることがあります。また、両者の比、つまりL/P比も細胞内の異常値をよく反映することになりますので、乳酸・ピルビン酸の値とともに、L/P比をあわせて評価することが大切です。ピルビン酸を補充することは、L/P比の改善につながりますが、まだ、一般的治療法ではありません。L/P比は、正常では10ですが、20くらいまで上昇する方は多くいらっしゃいます。お子様は40くらいですので、この点も重症と考えられます。アミンの酸分析では、高アラニン血症として見られます。発熱、脱水、ストレスなどで、値が上昇する事がわかっていますので、介護される場合に注意が必要です。お子様の場合、高乳酸血症が強いですので、抗アシドーシス剤として、重曹、ウラリットなどは必要と思います。処方していただいたほうが良いと思います。
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投稿日時:2006-7-27 22:23
投稿者:yasukoga

Re: ミトコンドリア脳筋症と、血中の乳酸値・ピルビン酸値

久留米大学医学部小児科の古賀靖敏です。
運動ができるようになる様な薬についてのご相談ですね。
結論からいいますと、現在服薬して有効性が認められた薬はありません。2006年にミトコンドリア病の治療に対するコクランレビューという総説的論文が出版されましたが、そこでも有効性を認められる薬剤は無いということでした。コエンザイムQ10、クレアチン、ジクロロ酢酸、ジメチルグリシンの4剤に関するこれまでの臨床データを解析されておりますが、いずれの薬剤も、誰もが認めるような有効性は確認できないとの結論でした。今後、継続して有効性を確認する必要もありますが。
また、一般的にミトコンドリア病の患者様で無理に運動負荷を行いますと、急激に筋が融解し、腎不全もしくは、高尿酸血症を来すことが知られております。筋が融解すると、筋組織からミオグロビンという物質が血中に放出され、それが腎の血液を濾過する装置を傷害し腎不全となります。熱中症や横紋筋融解症が正常の方より早く起こります。また、組織が一度に大量に死にますと、細胞の核由来の核酸物質が尿酸として体に貯まり、痛風結石を作ります。ミトコンドリア病の方は、元々体が酸性に傾いていますので、正常の方より尿酸を尿中に排泄する力が弱いために痛風になりやすいのです。ウラリットを服薬するのは、尿をアルカリにして、尿酸を排泄しやすくする作用があります。