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ドクター相談室 > 過去のドクター相談室4 > リー脳症と知的障害

投稿日時:2006-6-26 23:00
投稿者:ゲスト

リー脳症と知的障害

小2の息子がリー脳症(13513変異・大脳基底核、中脳に病変有り)なのですが、精神発達遅滞が重度(2歳レベル)で未だに話が出来ません。「アー、ウー、モモモ」など意味の無い言葉を発します。急に怒り出したり、泣き喚いたり、最近は笑い出す事が多くなりました。これは、リー脳症による知的退行と認識していいのでしょうか?これから良くなる事は考えにくいでしょうか?病気が今後進行しても本人が体調の変化を訴えられないので、不安があります。
それから、脊柱側わん症で30度以上有り装具を着用しています。リー脳症とは関係無いと思っていたのですが、他の患者さんにも側わんになっている方がいるとの事、やはり関係があるのでしょうか?40度以上になると手術をしなくてはいけないかもしれません。進行が止められないのであれば、無理に装具を着けさせなくてもいいのか等と考えてしまいます。今迄の症例で何か参考になる事などありましたら教えていただけますか。宜しくお願いします。

投稿日時:2006-6-27 19:57
投稿者:ゲスト

Re:リー脳症と知的障害 

私が分かる範囲でお答えします。
ミトコンドリアDNAの13513番目の変異がどのような症状を来すのか私は分かりません。多分後藤先生が診断されたのではないでしょうか。この変異がどのような意味をもつのか、後藤先生の回答を待ちましょう。
 ミトコンドリア病ではいろいろな精神症状をみることが知られています。お子様の精神症状はミトコンドリア病によることが考えられます。精神症状には波があります。必ずしもどんどん悪くなるとは言えません。精神症状に効く薬を主治医から処方してもらってはいかがでしょうか。精神科の薬で特にミトコンドリアに悪影響があるものは報告されていません。
 側彎ですが、ミトコンドリア病ではまれにしかみられません。側彎は脊柱の側の筋肉が、左右でアンバランスになった時にみられます。骨には異常がありません。片方の筋肉に緊張が強く出たとすると、そちらの方に曲がります。それを放置しておくと、筋肉が固くなり側彎は進みます。予防法は毎日体を左右に動かすことです。その時に筋肉の緊張をやわらげるために、脊柱の側の筋肉を指圧のようにマッサージします。すると筋肉が柔らかくなります。毎日、朝夕することが大切です。わたしはこれを側彎体操とよんでいます。ぜひお試しください。国立精神・神経センター埜中征哉

投稿日時:2006-6-27 23:20
投稿者:ゲスト

Re:リー脳症と知的障害

埜中先生有難うございます。
主治医からは「後藤先生に診て頂いた」と言われてました。精神症状の薬では昨年11月に『デプロメール』を処方されたのですが、副作用とかが気になっていたところ、12月に『ミート・ザ・ドクター』で後藤先生に相談する機会が有り、その時「効果が無ければ無理に服用しなくてもいいのでは」と言われ、他の子に危害を加えるほどひどい訳では無いのでと思っていたものですから、そのまま止めていました。側わん体操があるのは知りませんでした。素人の私がやっても大丈夫か心配なので、側わんの主治医に聞いてぜひやってみようと思います。お忙しいところ有難うございました。

投稿日時:2006-6-27 23:25
投稿者:ゲスト

Re:リー脳症と知的障害

以前後藤先生がリー脳症(13513変異)についての論文を出されているとの事でしたが、私どもにも手に入る図書でしょうか?本のタイトルが判りましたら教えていただけないでしょうか。

投稿日時:2006-6-28 9:01
投稿者:ゲスト

Re:リー脳症と知的障害

国立精神・神経センターの後藤です。
13513変異でおきるリー脳症の論文はJournal of Human Geneticsという科学雑誌に掲載されています(49巻, 92-96頁, 2004年)。この変異はMELASの患者様にも認められることがあり、海外から 5,6 編の研究論文が報告されています。私どもが検査したMELASの患者様でもこの変異を有している方がいらっしゃいます。
リー脳症ではこのようなミトコンドリアDNA上の変異の場合も、核DNA上の遺伝子変異(たくさんあります)の場合がありますが、どちらの場合も比較的重症の場合にリー脳症という病型をとるのであろうと考えられています。しかしながら、これら原因遺伝子変異と重症度や合併症の出方との関係は明らかではありません。遺伝子変異と臨床症状との関係が単純ではないというミトコンドリア病の特徴がここでもでてきます。私どもの論文では、13513変異を有する場合には、心伝導障害(ポンプとしての心臓をうまく動かすため心房、心室の順番に収縮させる必要が有りますが、そのために必要な刺激伝導系というところが障害されること、不整脈の一種です)を持つ患者が多いということを記載しましたが、これも必ずではありません。また同じ変異なのにMELASであったり、リー脳症であったりするかもわかっていません。
さて、一般的に薬の服用はお子さんの状態を診ながら注意深く量や種類を調整する必要があります。精神症状はその判断がむずかしいので、かならず主治医もしくは精神科の先生に薬の調整をしてもらってください。

投稿日時:2006-6-29 21:13
投稿者:ゲスト

Re:リー脳症と知的障害

後藤先生御回答有難うございました。薬は息子の様子を見てどうしても必要になったら相談してみようと思います。副作用が必ずしも無いとは言えないので、慎重に考えます。普段からストレスを与えないよう気をつけて生活していこうと思います。