国立精神・神経センターの後藤です。
13513変異でおきるリー脳症の論文はJournal of Human Geneticsという科学雑誌に掲載されています(49巻, 92-96頁, 2004年)。この変異はMELASの患者様にも認められることがあり、海外から 5,6 編の研究論文が報告されています。私どもが検査したMELASの患者様でもこの変異を有している方がいらっしゃいます。
リー脳症ではこのようなミトコンドリアDNA上の変異の場合も、核DNA上の遺伝子変異(たくさんあります)の場合がありますが、どちらの場合も比較的重症の場合にリー脳症という病型をとるのであろうと考えられています。しかしながら、これら原因遺伝子変異と重症度や合併症の出方との関係は明らかではありません。遺伝子変異と臨床症状との関係が単純ではないというミトコンドリア病の特徴がここでもでてきます。私どもの論文では、13513変異を有する場合には、心伝導障害(ポンプとしての心臓をうまく動かすため心房、心室の順番に収縮させる必要が有りますが、そのために必要な刺激伝導系というところが障害されること、不整脈の一種です)を持つ患者が多いということを記載しましたが、これも必ずではありません。また同じ変異なのにMELASであったり、リー脳症であったりするかもわかっていません。
さて、一般的に薬の服用はお子さんの状態を診ながら注意深く量や種類を調整する必要があります。精神症状はその判断がむずかしいので、かならず主治医もしくは精神科の先生に薬の調整をしてもらってください。