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投稿日時:2006-6-17 9:16
投稿者:ゲスト

ミトコンドリア病の予後について。

ミトコンドリア病は、小児慢性特定疾患に指定されていますが、この病気の進行度は、個人々で違うとお聞きします。急激に進む時期と、安定期と年齢的に分かれるものなのでしょうか。mtDNAの変異率によっても、重症度が解るものでしょうか。又、変異が減少して、病変自体が無くなり、回復したと言う症例があるものかどうか、最新の情報を出来れば教えて頂けませんでしょうか。

投稿日時:2006-6-17 16:56
投稿者:gyuichi

Re:ミトコンドリア病の予後について。 

国立精神・神経センターの後藤です。
一口にミトコンドリア病といっても、病気の原因もまちまちであり、症状の現れる臓器(心臓や脳など)もまちまちであり、またその症状の現れ方に影響する要因(年齢、栄養、感染などのストレスなど)の関与もあきらかになっておらず、現在のところ診断がついた時点でその後の進行度を予想することはとても困難です。ただし、MELASという脳卒中様症状を特徴とする病型の場合に、一時期頻繁に発作をおこしていたものがある時期から頻度が減ることや、視力障害を特徴とするレーバー病(レーバー遺伝性視神経萎縮症)では、一度起きた視力障害が自然に軽快するという経過をとる場合のあることが知られています。Pearson病というmtDNAの欠失をもつ病気の場合、乳児期の貧血はある時期から回復しますが、この場合は別の筋症状が後に現れてくることが知られています。また、チトクロームc酸化酵素欠損症の中で、乳児期に重篤な症状を呈する患者さまの中で、1歳ころから自然に回復して治癒する病型が知られています(良性乳児型チトクロームc酸化酵素欠損症といいます)。
ミトコンドリア病は、ミトコンドリアDNA(mtDNA)変異による場合と核DNA変異による場合がありますが、MELASではそのほとんどがmtDNA変異によると考えられ、Leigh脳症や慢性進行性外眼筋麻痺症候群ではその80%が核DNA上の何らかの遺伝子の変異によると考えられています。お尋ねのmtDNAの変異率という問題は、mtDNAの変異で起きる病気で、さらに変異率が100%でない場合(ヘテロプラスミーといいます)のことであります。その代表はMELASになりますが、以前「変異率の変動について」でお答えしたとおり、血液や筋肉での変異率は他の組織や臓器の現状を現したものではないこと、厳密には個々の細胞が異なった変異率をもっておりそのような細胞の集団が組織として臓器としてどのような機能障害になって現れるのかの予想が難しいなどから、進行度や他の症状の出現の可能性を予測することは困難です。
 ミトコンドリア病にはまだまだ分かっていないことがたくさんあります。本学会の会員を始め、世界中の多くの研究者の仲間が日夜研究しています。毎年そのような海外の研究者との交流を行いながら、新たな治療法の開発に励んでいます。

投稿日時:2006-6-17 17:26
投稿者:ゲスト

Re:ミトコンドリア病の予後について。

後藤先生、詳しいご回答有難う御座いました。この、相談室が出来た事、患者本人や、家族にとって、とてもありがたい限りです。身近に専門医が居ない私の様な、病児を抱える家族にとって、体調の変化に神経を使い、一喜一憂の毎日を過ごしている現状のなか、日々情報に飢えている状態です。拙い質問に真剣に詳しくお答え頂き、感謝の言葉もありません。これからも、ご研究を進めて頂き、一日も早い「朗報」を待ち望んでおります。この、「ドクター相談室」が今後とも、より良い医療従事者と患者・家族にとっての交信の場になることを、心より願っています。

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