久留米大学医学部小児科古賀靖敏です。
頭痛はMELASでは大変重要な症状です。大事に至らなくてよかったですね。
A3243Gをお持ちの体質の方は、家族性に片頭痛を訴えられる事が多い様です。しかし、片頭痛としてきちんと訴えが出来るのは小学生などある程度大きくなければ表現出来ません。頭痛を起こすきっかけは、高温もしくは低温の曝露、発熱などの感染症罹患時、精神的ストレスなど様々な原因が考えられます。脳の血流を定量的に検査すると、MELASでは脳内血流の不均衡分布が観察されます。特に、頭痛発作、脳卒中様発作急性期では、この不均衡分布がさらに顕著になります。どうしてこのような現象が観られるのかは、未だにはっきりしていませんが、血管障害が原因であることは、間違いありません。
日常生活で大事な事は、いつになく強い頭痛、目が見えないなどの視力障害、吐き気・嘔吐、半身痙攣、手足の麻痺などがあった場合は、脳卒中様発作を考え、すぐに救急病院に連れて行って下さい。これが、脳卒中様発作の初期症状であれば、早く治療することで、後遺障害を最小限に抑えることが出来ます。初期の画像検査の特徴は、ＣＴでは解りにくく、MRIもしくはSPECTが最も鋭敏と言われています。もし、脳卒中様発作であれば、鎮痛剤を服薬しても、上記症状が数時間以上続きますので、通常の片頭痛とは経過が異なります。今回のエピソードは、大事に至らずよかったと思いますが、今後、同様な症状が起こった場合、注意が必要です。鎮痛剤で頭痛がおさまれば心配要りません。