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投稿日時:2006-6-6 18:06
投稿者:ゲスト

Peason病について

4歳男児ピアソン病の疑い(はっきり結果は出てませんがほぼピアソン病の症状です)です。輸血2度しました。
以前から気になっていたのですが、この時期から夏になっても汗がまったくといっていいほど出ません。外で遊んでいたり気温の高い場所にいると体や手などが熱くなり顔ものぼせた感じになり体温も39度ぐらいになります。そとにはあまり出ないほうがよいでしょうか。
本人はあまりしんどそうではないのですが体に負担がかかっているのではないかと心配です。なにか良い対処方などありますでしょうか。

投薬ですが今はビタミンとタウリン、エルカルチンを粉砕して飲んでいます。主治医からジクロロ酢酸を飲めば乳酸値が下がりもっと元気になる。といわれるのですが、それと併用して飲まないといけないビタミン剤が飲めないので(錠剤がまだのめない事と、粉砕するとスゴイ匂いと味なので)飲んでいません。親としてジクロロ酢酸について知識がないので安易に服用してもよいのか効果はあるのかが疑問です。この病気とうまくつきあっていくにはどういう生活がよいでしょうか。なにかよいアドバイスがあればよろしくお願いします・・・

投稿日時:2006-6-6 22:01
投稿者:ゲスト

Re:Peason病について 

お答えします。わたしはずっと以前に岡山大学に受診していた患者さんで汗がまったく出ないという人を紹介していただきました。その方は女のお子さんで外眼筋麻痺症候群の方でした。ピアソン病とは親類のような病気で、遺伝子の異常も同じです(ミトコンドリアDNAの欠失があります)。そのお子さんの皮膚の電子顕微鏡写真をとってみたら、汗腺のミトコンドリアに異常がありました。
 汗腺のミトコンドリアに異常があれば汗は出にくくなります。すると体温調節がうまくいかなくなります。夏は体温が高くなり、多くのエネルギーを必要とします。過大なエネルギーを使うこと、それは体によくありません。エアコンをこまめに調節してお子さんの体温が37度くらいに保つようにしていただきたいのです。ミトコンドリア病ではありませんが、無痛無汗症という病気があります。その方達も汗が出ないので体温調節がうまくいきません。エアコンで外気温を調節して体調を保つようにしています。
 薬の件ですが、ジクロロ酢酸は最近副作用のことなどで、問題になっているようです。治療薬については、他の先生方にお答えしていただくことにします。後藤、古賀、中野先生、よろしくお願いします。
国立精神・神経センター 埜中征哉

投稿日時:2006-6-7 22:39
投稿者:knakano

Re: Peason病について 

東京女子医大小児科、中野です。
ご質問の中に、「ジクロロ酢酸Naを安易に服用してよいものか効果があるのか疑問です。」とありますが大変重要なご指摘です。
しかし、ミトコンドリア脳筋症の治療にジクロロ酢酸Naをどのように使っていくかについてはミトコンドリア病を診ている医師の間でもいろいろな意見がありまだ一定の見解がないのが現状です。そういうことを踏まえていただいて、ジクロロ酢酸Na治療に対する私の意見を述べさせていただきます。
ジクロロ酢酸Naは、副作用の点から極力使うべきではないが、有効な治療薬がない場合は試みるべき治療薬であり、使用する場合は漫然と使用するべきではなく、臨床上に明らかに効果があることを確認し、末梢神経障害、肝機能障害などの副作用を定期的にチェックして使用すべきと考えます。
その理由は次のようなことです。
ジクロロ酢酸Naは生体内には元来ない物質で投与することで初めて体内に蓄積し、ミトコンドリアの中にあるピルビン酸脱水素酵素複合体を活性化して細胞内、体内の乳酸を下げます。ミトコンドリア病の患者さんはミトコンドリアの働きが不十分なため多くは乳酸がたまっている状態です。ミトコンドリア病の患者さんにジクロロ酢酸を投与すると血液、髄液中の乳酸はほぼ100%低下(改善)します。それに伴い臨床症状が改善する例もある一方、改善しない例も数多くあります。どういう例に効くかは一般的には定まっていませんが、自分の経験では、乳酸の値が正常の2,3倍を超えるような高値の例、MELASの卒中様発作の一部に効果があると考えています。
一方、ジクロロ酢酸Naは元々体内にない物質であり、従来から様々な副作用の指摘があります。最近ではMELASに従来推奨されている量のジクロロ酢酸Naを投与しても副作用の末梢神経障害が出現すると報告されています。この点からも従来以上に副作用のチェックは必要ですし、副作用を上回る臨床上の有効性を必要とします。私もMELASの例では従来の量ではビタミンB1を投与していても末梢神経障害が出現する例を経験しており投与量、投与方法を工夫する必要があると思っています。

以上が私の意見ですが、埜中先生、後藤先生、古賀先生、これまで精力的にジクロロ酢酸Naを精力的に試みてこられた黒田先生、内藤先生、桃井先生はじめミトコンドリア病を診てこられた先生の間で十分に討議していただく必要があると思います。

投稿日時:2006-6-8 11:11
投稿者:ゲスト

Re:Peason病について 

久留米大学医学部小児科古賀靖敏です。
「Peason病について」の投稿の中で、ジクロロ酢酸に関する質疑がありましたので、この件に関しまして、私見を述べさせていただきます。
ミトコンドリア病は、細胞が生きていく上で必要なエネルギーが充分作れない病気です。その様な病気の場合、症状が悪くなる機序に少なくとも二つの大きな因子が考えられております。一つは、エネルギー不全により細胞が死滅していく機序、二つ目は、糖尿病などにみられるような血管障害により細胞が死滅していく機序です。血管障害に対する薬物療法としてL−アルギニンがあります。一方、エネルギー不全により細胞が死滅していく機序に対する薬物療法として、ジクロロ酢酸療法があります。この治療に関し、米国での大規模研究として、Leigh脳症、MELASの2病型で研究が行われました。しかし、乳酸は低下するものの、臨床的効果が無く、いづれの病型でもジクロロ酢酸療法の臨床的有用性が確認できず、使用中止になっております。
日本では、このような大きな副作用の報告は、あまりありません。この違いは、日本人と欧米人で薬剤の反応性が異なる可能性もあり、今後、日本での副作用報告の情報収集が必要です。
一方で、ジクロロ酢酸療法が明らかに効果がある例があり、末梢神経障害などの副作用を考慮しても、その使用にメリットがある例もあります。従って、ジクロロ酢酸療法を行うに際しては、主治医とよく相談の上で、その副作用に充分注意しながら、使用することが大切です。

投稿日時:2006-6-8 22:26
投稿者:ゲスト

Re:Peason病について

埜中先生、中野先生、古賀先生、早速の返事ありがとうございます。
体温調節の事、これからはもっと気をつけてあげたいとおもいます。
ジクロロ酢酸Naのこともとてもわかりやすく勉強になりました。
ビタミン剤と同じもので副作用はないものだと思っていたので、もし服用するならよく考えたうえで使用したいと思いました。
もう少し飲めるようなビタミン剤があれば主治医に増やしてもらおうと思います。ピアソン病でもL-アルギニンなどもよいのでしょうか?鉄剤はいくら飲んでも効かないのでそれに代わるような良い薬があれば教えていただけますか?
お忙しいのにいろいろ聞いてすみません・・・

投稿日時:2006-6-9 20:06
投稿者:ゲスト

Re: Peason病について

ジクロロ酢酸Naの服用者の効果、副作用のトレース分析を是非お願いいたします。出来れば国内すべての対象者で。
現在21歳の息子が(MELAS(3243変異)平成6年より続けて服用しております。息子の場合は服用後早い段階で乳酸値が半減し現在も3ヶ月ごとの検査で正常値を保っております。
肝機能にも影響は出ておりません。乳酸値改善によって生活、活動の幅が広がった例としてご報告できると思います。末梢神経障害についてはこれまで特に観られなかったと思いますが注意して観察を続けたいと思います。
もうひとつ、次男(MELAS 故人)も同じく平成6年から12年まで服用いたしましたがこちらは80から40に改善して2年ほどは体調も落ち着いておりましたが徐々に発作がもどり多臓器不全で10年の人生を終えました。当時は試薬にも選択肢は少なくジクロロ酢酸について複数の病院での検討、インフォームド・コンセントを経ての服用決意でのことでした。一家で2例を経験するのは少ない事と思います。10年を経た今、統計的なこと、個人個人の記録を持ちよる際には是非参考にしていただきたいと思います。

以上コーナーの趣旨から逸れて申し訳ありませんがご報告です。