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投稿日時:2006-5-30 12:37
投稿者:ゲスト

ミトコンドリア脳筋症と脳卒中様発作について。 

7歳の息子(小学校2年)が、昨年の夏にミトコンドリア脳筋症と診断され、10がうより、アルギニン(アルギU顆粒)を服用開始しています。
この病気の典型的な症状として、挙げられる「脳卒中様発作」についての質問ですが、息子は今まで1度も発作を経験していません。アルギニンの服用によって、予防が出来ると言う事ですが、将来的に100%無いとは言い切れないと、説明を受けています。万一、発作が起きても軽く済むと予想されていますが、発作の前兆のようなものは、判断できないものでしょうか。また、注意点とか有るようでしたら、アドバイスをお願い致します。
それと、最近風邪を拗らす事が多く、そのせいか、立っているとふらつくような事が多くなり心配しています。極端に痩せていて、そのせいか筋力も弱いようです。
筋力や体力の低下は、ゆっくりでは有るけれど、「進行」すると言われていますが、薬や何かで少しでも遅らす事は出来ないのでしょうか?筋力をつけるリハビリとか方法が有れば教えてください。
投稿日時:2006-5-30 14:18
投稿者:ゲスト

Re: ミトコンドリア脳筋症と脳卒中様発作について。 

MELASにおけるL-アルギニンの服薬は、現在脳卒中様発作の急性期治療および発作寛解期の発作予防薬として世界的に注目されている治療法で、現在、日本医師会医師主導治験として日本での承認申請へ向けての研究が進んでいるところです。
お子様が、L-アルギニンを開始されたとの事ですが、診断がMELASであり、かつ遺伝子診断としてミトコンドリアDNAのA3243Gの点変異であれば、より効果が期待できます。
L-アルギニンの効果は、動脈の拡張力を改善し、血管のしぼみやすい体質を改善する、血管内皮機能を改善する、脳内の血流の異常の改善する事で脳卒中様発作の治療および予防効果を発揮します。この場合、単に服薬するのみでなく、内服後2時間のアミノ酸分析で、血の中のアルギニンが正常になっていることの確認が重要です。
さて、脳卒中様発作の前兆として、大切なのは、いつになく重症の片頭痛発作、目がちらちらするような感覚(閃輝暗点)、視野異常、嘔吐・吐き気などであり、それらの症状がいつになくひどい場合は、救急病院に行かれてください。目が見えなくなったり、半身痙攣がおこる可能性があります。無治療であれば、10歳位で脳卒中様発作が起こってきます。今までの経験では、L-アルギニンを開始した場合、片頭痛発作が軽くなることが多いようです。
筋力低下の症状は、筋肉でエネルギーが作れない事によるもので、ミトコンドリア脳筋症そのものの症状です。下手に筋トレすることで、逆に筋が崩壊する危険もあり、お勧めできません。クレアチン療法は、主に筋でのエネルギー代謝改善を目的とした治療法ですが、腎不全を来したという報告があり、使いにくい状況です。エネルギー代謝改善目的でピルビン酸ソーダを数人の方に飲んでいただいておりますが、その効果を判定できる程、データが集まっておりません。将来的なミトコンドリア病の治療候補薬になります。

投稿日時:2006-5-30 17:57
投稿者:ゲスト

Re: ミトコンドリア脳筋症と脳卒中様発作について。 

詳しいご説明、有難う御座いました。息子はMELASの3243A→G変異を持っていますので、アルギニンはかなりの効果が有ると言う事で、安心致しました。
掛かっている病院では、服用開始から、1ヵ月後に血液検査をし、今年の1月頃に再度したと言う記憶が有りますが、アミノ酸分析は、これぐらいの間隔で宜しいのでしょうか?その点は、主治医にお任せしておりますので、よく判らないのですが…。
筋力の低下から来る、眼瞼下垂の症状も出ていますので、早くピルビン酸ソーダのデータが集まり、医師主導治験に採択される事を願っています。
これからも、エネルギーの温存を図りながら、無理のない生活を送らせて行きたいと思っています。